研究課題/領域番号 |
18K19337
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
西村 芳樹 京都大学, 理学研究科, 助教 (70444099)
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研究分担者 |
杉山 弘 京都大学, 理学研究科, 教授 (50183843)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | 緑藻 / 生殖 / 機能性ポリアミド |
研究実績の概要 |
緑藻クラミドモナスの生殖プログラムを機能性ポリアミドによって制御することを目指した。機能性ポリアミドの結合配列として、クラミドモナス接合子特異的遺伝子の上流領域に保存されるZYREを選んだ。実験開始当初、機能性ポリアミドの緑藻に対する細胞透過性が、想定していたよりも著しく低く、その効果も限定的であるという問題があった。細胞透過性を高めるために、ポリアミドの濃度をはじめ、細胞透過性ペプチド、エンドポーターとの共添加、さまざまな界面活性剤、さらにポリアミド自体の修飾についても条件検討をおこなった。多くの細胞透過性ペプチドや界面活性剤には細胞毒性が確認され、とくに接合のようなデリケートな現象については著しい阻害効果があり、さまざまな困難があったなか、ようやくポリアミドのアルギニン修飾が細胞透過性を高めることを確認した。これまでに第1回目のRNAseq解析が完了しており、その結果、ポリアミド添加によって接合子特異的遺伝子群の発現が低下することが確認された。現在さらにその再現性を確認すべく追加RNAseq解析の準備、および個々の遺伝子のRT-qPCRによる詳細な解析を準備中であり、その結果を論文としてまとめる予定である。そのため研究期間の延長を申請した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験開始当初、機能性ポリアミドの緑藻に対する細胞透過性が想定していたよりも著しく低く、その効果も限定的であるという障害があり、研究の進展が遅延していたが、細胞透過性を高めるために様々な検討をおこなった結果、ようやくポリアミドのアルギニン修飾が細胞透過性を高めることを確認した。これまでにポリアミド処理した接合子についてRNAseq解析を完了し、そのデータ解析を遂行中である。
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今後の研究の推進方策 |
アルギニン修飾したポリアミドで処理した接合子をもちいたRNAseqの結果について、データ解析を進め、配偶子/接合子それぞれにおけるポリアミドの影響を確認する。とくに影響が大きかった遺伝子について、RT-qPCRによる、より詳細な定量解析をおこなう。またそれらの遺伝子の上流配列に接合子特異的遺伝子の制御に関わると考えれらるcis配列であるZYREの相同配列が存在するかどうか確認する。これまでのpreliminaryな解析の結果、ZYREに対してデザインしたポリアミドは接合子特異的遺伝子の不活性化だけでなく、配偶子特異的遺伝子のいくつかについても影響を与えている可能性が示唆されている。このことは、ZYREが接合子特異的遺伝子群の活性化のみならず、配偶子特異的遺伝子群の不活性化をも制御することで、配偶子から接合子へのすみやかなトランスクリプトームの変化を実現している可能性を示唆しており、今後論文をまとめる上でこの点を検証していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
ポリアミド処理の実験条件の検討に当初想定したよりも時間がかかり、現在最初のRNAseq解析が完了した段階である。今後さらに条件を増やしてRNAseq解析およびRT-qPCR解析を行い、さらにその成果を論文としてまとめるために英文校閲費、論文投稿費などが必要となる。そのためにどうしても研究期間を延長し、予算を残しておく必要があった。
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