研究課題
野生型の Arthrospira platensis NIES-39 株から運動能欠損突然変異体を新たに５株単離した。また、NIES-39株に由来する直線状変異体 str-1 を親株として、運動能欠損突然変異体を別に１株単離した。以上の株はいずれも遺伝的に独立な自発突然変異体として単離されたものであり、ゲノム内の異なる部位にそれぞれ変異を持っているものと予想される。これらの株は、他の運動能欠損変異体と同様、陸上でも水中でも運動能を失っていた。これらのうち４株について、次世代シークエンサーによるゲノム塩基配列の解析をおこなった。いずれの株もゲノム内に変異が検出されたが、すべての株で同じ遺伝子に変異が入っているようなことは無かった。この結果は、A. platensis の運動には１種類の遺伝子の産物のみが関与しているのではなく、複数の遺伝子の産物が関わっている可能性を示唆している。この４株の変異部位の比較から、運動に関わっている可能性がある遺伝子の候補がそれぞれの株について１種類ずつ見いだされた。これらの候補遺伝子のうちの１つについては、そのコードするタンパク質が、別の単細胞のシアノバクテリア種で遊泳に関わっていることが知られているタンパク質と高い相同性のある領域を持っていた。これらのタンパク質の間で相同性のある領域は限定的であり、それ以外の領域には相同性が見られないことから、両者は進化的に近縁なタンパク質というわけではないと考えられる。しかし、高い相同性のある領域が見られることから、ある種の単細胞シアノバクテリアの水中での遊泳運動と A. platensis の水陸両用の運動の間に機構上の共通性がある可能性が示唆された。以上のように、A. platensis の運動に関わる遺伝子の有力な候補を見出すことができた。
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Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry
巻: 85 ページ: 739-742
10.1093/bbb/zbaa050
