研究課題/領域番号 |
18K19343
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
坂本 亘 岡山大学, 資源植物科学研究所, 教授 (20222002)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | 形質評価 / QTL / ソルガム / 葉の老化 / 環境ストレス |
研究実績の概要 |
本研究では、大型の作物ソルガムが持つ、早枯れ性とステイグリーン性を決定する量的形質遺伝子(QTL)を様々な手法を用いて同定し、野外環境における葉のライフスパンと環境応答の新たな相互作用を遺伝素因として明らかにするための研究を進める。 これまでの研究で、グレインソルガムBTx623とたかきびNOGの交雑後代による組換え自殖系統 (RIL)約200個体の集団を維持している。さらに、F6世代でRIL252個体のNGS解析により約4,000のSNPマーカーによる高密度のジェノタイピングを完了している。本研究ではまず、このたかきびRIL集団を用いてステイグリーン形質の分離を調べた。今年度は網室で栽培したF10集団のステイグリーンを目視により調べ、QTL解析に用いたところ、5番染色体の大きなQTLを検出することができた。一方で、幼苗や圃場栽培でのステイグリーン測定におけるQTLでは同じピークが観察されなかったので、このQTL遺伝子とステイグリーンには何らかの環境要因が関係する可能性が考えられた。 興味深いことに、今回得られたQTLは、圃場栽培において代表者が見出した有機リン系殺虫剤(スミチオン)にNOGが感受性、BTx623が抵抗性であることを用いたQTL解析で検出されるピークとほぼ同じ位置にあることがわかった。これらの結果より、スミチオンで誘導される細胞死と網室栽培で検出されるステイグリーンが同じ機構で何らかの環境シグナルを認識していることが推測された。 本研究により検出されたQTLについて、BTx623の全ゲノム情報と、NOGのリシーケンスにより得られた配列を比較して該当するDNA領域を調べたところ、NOGで欠失した領域が存在することが明らかになった。来年度以降、これらの領域を詳しく調べて原因遺伝子を特定する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ステイグリーン形質の解析については、先行研究での解析結果もあり、今年度は順調に取得することができた上に、再現性のQTLが検出できている。また、スミチオン耐性との関連性については予想外の発見で有り、本研究で追求するステイグリーン現象の環境応答に関する新しい知見につながるので、同じ応答をする生理的な要因についても今後検討する。
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今後の研究の推進方策 |
様々な手法を用いたステイグリーン形質評価については、QTLが得られる栽培条件が明確になってきたので、今後、反復を行なってデータ取得を完了する。 5番染色体に得られたQTLについては、H30年度内に候補遺伝子を推定する予定であったが、リシーケンスの結果では、該当するNOGのゲノム領域が反復配列を含んでおり、ゲノム比較が簡単ではないことがわかってきた。NOGのリシーケンスデータの信頼性については今後も検討を重ねるが、PacBioなどの新たなNGS解析でのロングリード活用なども検討する。通常のカスタムプライマー作成によるPCRでの欠失検出が現在のところ成功していない状況であるが、このPCRによる検出も同時に進める。一方で、QTLにより予想されるゲノム領域には、NOGのみに欠失がある遺伝子もいくつか検出されているので、H31年度の早い段階で候補遺伝子を特定し、相補性検定などの実験について計画を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究で発表する論文の発表が当該年度ではなく来年度になったために、出版にかかる費用を繰り越して次年度に使用するため。
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