研究実績の概要 |
リボソームをヒト癌細胞に取り込ませ、細胞内での変化を免疫染色法とwestern blotで調べた。申請者が確立した実験方法は、とても簡便な方法であり、細胞塊形成活性の判定を容易にフォローできる。1 )ヒト癌細胞(MCF7)を培養する。2)トリプシン+EDTA処理を行い、細胞をシングルセルになるように懸濁する。3)トリプシン阻害液を加えて反応を止め、細胞数をカウントし、予めサンプルを加えておいた4 well dishに細胞を加え、数日後に細胞塊形成を観察する。 ヒト由来の乳がん細胞、肺癌細胞、異癌細胞細胞をバイオリソースセンターから購入した。各々の細胞を上記した方法に従ってリボソーム を取り込ませると、どの細胞も細胞塊を形成し、細胞増殖を停止した。そこで、本研究では、最も細胞塊形成率が良かった乳がん細胞MCF7に着目し、リボソームの癌細胞に対する影響を調べた。 1)BrdUを取り込ませ、免疫染色法を行ったところ、細胞の増殖が明らかに減少していた。。2)細胞周期を免疫染色法で調べたところ、Go, GI期の細胞がコントロール細胞と比べ、増加していた。3)EMTマーカーである、TGFb1とSnail1の発現をwestern blotで解析したところ、リボソーム を取り込んだ癌細胞では、両分子の発現が誘導されていた。4)癌抑制因子であるp53の発現も、リボソーム を取り込んだ癌細胞では、増加していた。 以上の結果から、半永久的に増殖を続ける癌細胞でさえ、リボソーム を取り込むと増殖を停止することから、将来はリボソーム を安心・安全な抗がん剤の基盤物質として用いることが期待できる。
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