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2018 年度 実施状況報告書

先天的恐怖誘導性生体保護モードの解明

研究課題

研究課題/領域番号 18K19350
研究機関関西医科大学

研究代表者

小早川 高  関西医科大学, 医学部, 准教授 (60466802)

研究期間 (年度) 2018-06-29 – 2020-03-31
キーワード情動 / 先天的恐怖 / 嗅覚
研究実績の概要

先天的恐怖情動は危機状態での生存確率を上昇させる行動と生理応答を統合誘導する脳の能力として進化したと考えられる。しかし、モデル動物に効率的に先天的恐怖情動を誘発する技術が存在しないため、潜在的な恐怖情動性の生命保護作用の実態は未解明であった。本研究では、強力な先天的な恐怖行動を誘発する人工匂い分子としてチアゾリン類恐怖臭(Thiazoline-related fear odors: tFOs)を開発することでこの技術的な問題を克服し、先天的恐怖が持つ生命保護作用の実態とそれを司るメカニズムの解明を進めた。TFOs刺激は体温、心拍数、酸素代謝を大きく抑制するとともに、免疫応答にも強力な影響を与えることが初めて明らかになった。これらの作用は活性酸素の発生や過剰な自己免疫を抑制することで危機状態における保護作用を示し、具体的には低酸素障害、脳梗塞などの虚血再灌流障害、敗血症などの複数の疾患モデルに対する強力な治療効果を発揮した。これらの結果などを総合して、先天的恐怖刺激は潜在的な内在的保護能力が発揮される危機対応モードへと生体の状態を遷移させるという新たな概念を提唱したい。この内在的な生命保護現象をヒトを含む各種動物に対して効率的に誘発する感覚刺激を発見するための複数の指標を開発し、これらの指標を活用して極めて強力な生命保護作用を誘導する匂い分子の開発にも成功した。さらに、TFOを感知して行動や生理応答を誘発する感覚受容体遺伝子のノックアウトマウスと標識マウスを作成し、先天的恐怖情報の感知と脳への伝達の制御メカニズムを解明した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究などにより強力な先天的恐怖情動が誘発する新たな技術が確立され、これにより、先天的恐怖情動が危機状態において生死を左右するレベルの強力な保護効果を持つという重要な生物学的な現象の解明につながった。

今後の研究の推進方策

生命保護作用を誘導する匂い分子と受容体遺伝子との結合により多様な生命保護作用の誘導に関する情報が生成されるメカニズムを解明し、受容体とリガンドの相互作用がこれまで考えられていないレベルの高次情報処理を行うという概念を確立する研究を実施する。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2018

すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 3件)

  • [雑誌論文] Large-scale forward genetics screening identifies Trpa1 as a chemosensor for predator odor-evoked innate fear behaviors.2018

    • 著者名/発表者名
      Wang Y et al.
    • 雑誌名

      Nat Comm

      巻: 9 ページ: 2041

    • DOI

      doi: 10.1038/s41467-018-04324-3.

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] 先天的恐怖誘導性危機応答モードによる生命保護2018

    • 著者名/発表者名
      小早川 高
    • 学会等名
      生理研研究会『感覚免疫学研究会』
    • 招待講演
  • [学会発表] 先天的と後天的な行動制御メカニズムとその生理学的意義2018

    • 著者名/発表者名
      小早川 高
    • 学会等名
      第11回北陸合同バイオシンポジウム
    • 招待講演
  • [学会発表] Innate fear odors orchestrate life-or-death effects in mice.2018

    • 著者名/発表者名
      小早川 高
    • 学会等名
      遺伝研研究会「Circuit construction in the mammalian brain (哺乳類脳の機能的神経回路の構築メカニズム)」
    • 招待講演

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公開日: 2021-12-27  

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