研究課題
本研究は、新規モデルの開発を通して母体年齢の変化が胚発生に与える影響を細胞・分子レベルで理解することを目的としている。本年度は、研究代表者の新しい所属機関でゼブラフィッシュの野生型系統ならびに変異体を体系的に解析できる基盤を整備することを目指し、動物施設において飼育設備の整備を進めた結果、ゼブラフィッシュ自動飼育システムを安価に構築することが可能になった。本研究では長期間に渡る継続的な親魚の飼育が必要となるため、飼育設備の拡大に向けた基盤を確立したといえる。これにより次年度では、前所属で飼育を継続している野生型と変異体系統の移設を行い、解析を進める予定である。また、本研究ではゼブラフィッシュによる新規モデルの開発を第一に目指しているが、両生類研究センターが有する豊富な両生類リソースの活用についても検討した結果、予備的ではあるもののネッタイツメガエルにおいて母体年齢に依存して体軸のパターニングに異常が生じることが明らかになった。また脊椎動物全般で正常胚発生率は排卵後の時間経過に依存して低下するが、この現象がネッタイツメガエルでは体軸のパターニングと関連することを示唆する結果が得られた。これらの結果は、本研究で着目する母体年齢が初期発生に及ぼす効果が、複数の水棲脊椎動物種に共通の現象である可能性を示唆している。次年度は、ゼブラフィッシュに加えてネッタイツメガエルを用いた解析についても更に進めたい。
3: やや遅れている
研究代表者の異動により、ゼブラフィッシュを用いた当初計画については、野生型系統と変異体検討の両方で収集・交配の中断が余儀なくされ、遅延が生じている。一方で、現所属で収集されたツメガエルリソースから本研究の目的に寄与しうる新知見が得られており、今後の発展が見込まれる。
補助期間を延長して研究を実施することにより、当初の目的の達成を目指す。引き続き交配プログラムを進めると共に、他機関のコロニーから胚サンプルを入手し並行して解析を行うことにより、計画全体の効率化と、ゲノムワイド遺伝子発現プロファイルデータの向上を計画している。加えて、予備的な知見が得られたツメガエルにおける正常発生率の低下現象について解析を進め、本研究の目的である新規モデルの開発に資するかを検討する。
当初計画に遅れが生じたことから、消耗品費と人件費が軽微で済み次年度使用額が生じた。今後の研究実施で必要となる飼育設備、試薬類、ゲノムワイド遺伝子発現プロファイル解析に充てる計画である。
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Cell Reports
巻: 30 ページ: 3875~3888.e3
10.1016/j.celrep.2020.02.074