研究課題/領域番号 |
18K19352
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
安田 さや香 公益財団法人東京都医学総合研究所, 生体分子先端研究分野, 研究員 (80624353)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | プロテアソーム / ユビキチン / リボソーム / タンパク質分解 / 浸透圧ストレス |
研究実績の概要 |
細胞質に存在するタンパク質やオルガネラの分解経路は次々に解明されてきているが、核内のタンパク質分解機構は未だ不明点が多い。本研究では、核内リボソームの品質管理機構の解明を通し、これまで見過ごされてきた、核内のタンパク質分解経路の体系的理解を目的とする。 平成30年度は以下の知見を得ることに成功した。 1.核内リボソーム分解制御機構の解析:複数のリボソームタンパク質について、EGFP融合安定発現細胞を用いて生細胞タイムラプスイメージング解析を行ったところ、高浸透圧ストレスにより核質で凝集し、プロテアソームfociと共局在すると共にプロテアソームによって分解されることが確認された。また、E1阻害剤存在下においてもリボソーム凝集は観察され、プロテアソーム及びp97阻害剤存在下では凝集が肥大化したことから、高浸透圧刺激は細胞容量減少を引き起こし、分子クラウディング効果により正常なリボソームアセンブリが阻害されること、そして、プロテアソームがp97およびRAD23Bと連携してリボソームを分解除去するという機構が示唆された。また、プロテアソームfociは核内タンパク質分解、特にアセンブリから漏れたリボソームの分解の場となることが明らかとなった。 2.プロテアソームfoci形成制御因子の同定・解析:高分解能質量分析計により同定したプロテアソームfociに局在化するユビキチン関連因子のうち、RAD23BやUBE3Aのノックアウト細胞ではプロテアソームfociの形成率が低下したことから、これらのコファクターが核内のタンパク質分解を制御している可能性が示唆された。 3.遺伝子改変マウスを用いた生体レベルでの核内品質管理機構の実証:プロテアソームサブユニット、PSMB2のC末端にEGFPを融合させたPSMB2-EGFPを発現するキメラマウスの樹立に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、リボソームタンパク質にEGFPを融合した安定発現細胞の作出により、「細胞容量減少に伴い核質でリボソームタンパク質が凝集しプロテアソームfociと共局在すること」、および「プロテアソームがユビキチン依存的に集積・分解すること」を明らかにした。また、核内品質管理機構の制御因子として、RAD23BやUBE3Aがプロテアソームfociの形成を制御している可能性が強く示唆された。さらに生体レベルでの実証を行うべく、プロテアソームEGFPノックインマウスについて、キメラマウスの樹立まで成功しており、研究は概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
1.プロテアソームfociの形成機構と生理的意義:プロテアソームfociの形成に必須であるRAD23Bは、2つのユビキチン結合ドメインと1つのプロテアソーム結合ドメインを持つことから、RAD23Bのドメイン解析をすることで、ユビキチン化リボソームへのプロテアソームのリクルート機構を明らかにし、高浸透圧刺激によるリボソームの凝集体形成から分解までの過程を明らかにする。 2.遺伝子改変マウスを用いた核内品質管理機構の実証:H30年度はプロテアソーム可視化マウスの作出に成功したことから、作出したマウスをQUBIC法により透明化し、脳・腎などの特に浸透圧ストレスにさらされる組織を摘出し、ライトシート顕微鏡による組織・細胞レベルでの解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
RAD23Bのドメイン解析に用いるオリゴDNAの納品が若干遅れたため。使用計画の変更はなく、予定通りRAD23Bの変異体を作出し、ドメイン解析を実施する。
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