C. inopinataとC. elegansの両種で、L4幼虫期とYoung Adult期の発現量をRNA-seqを用いて調べた結果から、成長および種間で異なる変動遺伝子を検出した。C. inopinataとC. elegansのそれぞれの種において、各遺伝子の内部と近傍の2000bpで転位因子の挿入状況を調べ、種間で成長率に差が出るL4幼虫期とYoung Adult期の遺伝子発現量を用いることで、転位因子とその近傍遺伝子の発現量の関係を調べた。まず、この二種のオーソログを両種の転位因子の有無によって、二種ともあり、C. inopinataのみにあり、C. elegansのみにあり、二種ともなしの4群に分けた。この4群について、種ごとに種内の遺伝子発現量の分布の差を調べた。その結果、両種のどちらにおいてもC. inopinataに転位因子がある遺伝子群は発現量が有意に低いという結果が得られた。ここから、C. inoinataの転位因子は二種の線虫の共通祖先で既に発現量が低い遺伝子近傍に多く挿入した可能性が考えられる。次に、C. inopinata側に転位因子の挿入がある遺伝子に、種間の発現変動遺伝子のエンリッチメントがあるかを調べた。その結果、有意なエンリッチメントはなかった。この結果から、転位因子が近傍遺伝子の発現変動を起こす可能性は少ないか、発現を変動させた転位因子は選択で大半が除かれた可能性が考えられる。少なくともこの結果からは、転位因子が多くの遺伝子の発現量を変化させていることは考え辛いため、少数の重要な遺伝子の発現量を転位因子が変化させたことにより、大きな進化に繋がった可能性が考えられる。
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