研究課題/領域番号 |
18K19357
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
丹羽 康貴 筑波大学, 国際統合睡眠医科学研究機構, 助教 (40590071)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | Orexin-iCre |
研究実績の概要 |
個体の行動の中には睡眠覚醒のように、神経活動に依存した速い制御だけでなく、睡眠負債などの言葉で表されるようなゆっくりとした細胞生物学的機能の変化がその制御に大きく関わっていると予想されるものも少なくない。しかし神経細胞の細胞生物学的機能と個体の行動との間の因果関係を探るためには、従来の神経活動操作から一歩階層を深めた、遺伝子発現制御を介した細胞内分子の操作、すなわち分子遺伝学的手法が求められる。本研究は、応募者が新たに開発した光分子遺伝学的手法であるTet-Lightシステムがin vivoでの細胞内機能操作に有効だと初めて示すことを目的とする。当該年度は、すでに培養細胞系で構築済みの青色光依存的に制御可能なTet-Lightシステムを、適切に個体の脳内神経細胞に導入するために、Hcrt/Orexin-iCreマウスの作製を行った。具体的にはCRISPR/Cas9を用いてHcrt/Orexin遺伝子の開始コドン直下にiCre遺伝子をノックインした。これによってHcrt/Orexin遺伝子の発現の代わりにiCre遺伝子が発現する。この系統を樹立すれば、Orexin遺伝子を欠失し、ナルコレプシー様症状を示すマウスのオレキシン(iCre発現)神経細胞にのみAAVを導入し、特定の遺伝子を発現させることが可能になるため、本研究において非常に有用なツールとなりうる。PCRによる遺伝子解析の結果、正常にノックインされたHcrt/Orexin-iCreマウスが1系統得られた。現在この系統をCreレポーターマウスと掛け合わせたり、この系統にCre依存的にレポーター遺伝子を発現するAAVを導入して、オレキシン神経細胞にのみ遺伝子導入が可能であるかを検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は、すでに培養細胞系で構築済みの青色光依存的に制御可能なTet-Lightシステムを、適切に個体の脳内神経細胞に導入するために、Hcrt/Orexin-iCreマウスの作製を行った。具体的にはCRISPR/Cas9を用いてHcrt/Orexin遺伝子の開始コドン直下にiCre遺伝子をノックインした。これによってHcrt/Orexin遺伝子の発現の代わりにiCre遺伝子が発現する。この系統を樹立すれば、Orexin遺伝子を欠失し、ナルコレプシー様症状を示すマウスのオレキシン(iCre発現)神経細胞にのみAAVを導入し、特定の遺伝子を発現させることが可能になるため、本研究において非常に有用なツールとなりうる。PCRによる遺伝子解析の結果、正常にノックインされたHcrt/Orexin-iCreマウスが1系統得られた。現在この系統をCreレポーターマウスと掛け合わせたり、この系統にCre依存的にレポーター遺伝子を発現するAAVを導入して、オレキシン神経細胞にのみ遺伝子導入が可能であるかを検討している。Tet-Lightシステムをナルコレプシー様症状を示すマウスのオレキシン神経特異的に導入するには、この系統の樹立が最も効率が良いため、本研究課題はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
得られたHcrt/Orexin-iCreマウス系統を用いて、Creレポーターマウスと掛け合わせたり、この系統にCre依存的にレポーター遺伝子を発現するAAVを導入して、オレキシン神経細胞にのみ遺伝子導入が可能であるかの検討を続ける。遺伝子導入が可能であれば、Tet-Lightシステムを同系統に導入し、個体での運用が可能かどうかを精査する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画の確実な遂行のため、当初計画していた出張を行わなかったため差額が生じた。次年度は得られた成果をもとに発表を行っていく予定である。
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