2年目となる当該年度は、初年度に作製したHcrt/Orexin-iCreマウスの組織学的および行動学的な検証を行った。具体的にはOrexin-iCreマウスとCreレポーターであるAi9マウスを交配し、オレキシン神経の存在する視床下部外側の組織切片を抗オレキシン抗体および抗RFP抗体で二重染色した。それらを共焦点顕微鏡で観察すると、オレキシンに対する染色が存在する細胞ではtdTomatoに対する染色が観察された。また、視床下部内側のオレキシンに対する染色が見られない細胞にも一部tdTomatoに対する染色が観察された。おそらくこれらは過去にオレキシンを発現した神経細胞であることが予想される。また、Orexin-iCreマウス同士を交配しホモマウスを作製した。これまでの知見から、このマウスではHcrt/Orexin遺伝子が欠失することでナルコレプシー症状を示すと予想される。実際にOrexin-iCreホモマウスの睡眠覚醒行動を調べてみると、ナルコレプシーに特徴的なカタプレキシー(情動脱力発作)が観察された。以上のことから、ナルコレプシー様症状を示すマウスのオレキシン(iCre発現)神経細胞にのみAAVを導入し、特定の遺伝子を発現させることを可能にするマウスの準備を整えることができた。今後はこのマウスを使用して実際にTet-Lightシステムをオレキシン神経に導入し、睡眠覚醒行動の異常が回復するかを検証していく。
|