研究課題
本研究では、宿主生物と共存関係を構築した“共存型RNAウイルス”が、宿主生物のコミュニケーション機構の一つである細胞外膜小胞を利用して伝播している可能性を検証することを目指した。具体的には、共存型ウイルス研究が進んでいる真菌を対象とし、真菌由来の細胞外膜小胞の取得と共存するウイルス核酸を検出すること、実験的に共存型ウイルスが細胞外膜小胞を介して水平伝播可能であることの証明を目指して研究を進めてきた。最終年度は、実験的に共存型ウイルスが細胞外膜小胞を介して水平伝播可能であること、野外環境中にRNAウイルスを含有している細胞外膜小胞が存在する可能性を検証することを目標とした。先ず疑似感染実験としてシャトルベクターを有するバクテリア由来の細胞外膜小胞画分を用い、パン酵母へのシャトルベクターの伝達を調査した。様々な条件下で細胞外膜小胞画分を処理後、シャトルベクター保持パン酵母のみが生育可能な選択培地に細胞を塗布したが、シャトルベクター保持細胞は得られなかった。以上の結果から、パン酵母細胞にバクテリア由来細胞外膜小胞が取り込まれる効率は極めて低いことが示唆されたが、本研究で検出を目指している真菌間の細胞外膜小胞伝達では、バクテリア由来とは異なる組成の細胞外膜小胞を用いるため、異なる結果が得られるかどうか調査した。上記実験と異なり伝達が起きた細胞を選択することが出来ない為、その検出感度は大幅に低下した状態ではあるが、共存型RNAウイルスの伝達は確認できなかった。環境試料を用いた解析では、先だって取得したDNAシーケンス情報を解析したところ、多くのウイルス配列が検出された。しかし、細胞外膜小胞とウイルス粒子の分離が困難であることから評価が難しく、RNAシーケンスの実施は見送った。
すべて 2020 2019
すべて 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)