研究課題/領域番号 |
18K19360
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
石田 貴文 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (20184533)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | 霊長類 / 精液 / 社会構造 / 進化 |
研究実績の概要 |
客観性と定量性を担保した実験系に基づき「霊長類の精液凝固の定量」をおこない、「生殖関連分子と霊長類社会」を検証するのが本研究の第1の目的である。具体的には、精液凝固の担い手である精しょうタンパクSMGの遺伝子構造を、異なる社会構造を示す多種の霊長類で決定、試験管内でタンパク合成・凝集をおこない定量化し、社会構造との関連を評価する。 今年度は、画一的でなく多様な社会構造をもつことが明らかになったテナガザル科の3属6種において、精子競争の影響を受けて進化してきたと考えられる霊長類の精漿遺伝子SEMG1,2の配列を決定し、遺伝子構造と精子競争との関係性を調べた。SEMGタンパク質は60アミノ酸のリピート構造をもっており、霊長類の進化の中でリピート数は多様に進化してきたことが知られている。SEMG1についてはHylobates属においてナンセンス変異が種ごとに見られるものの、リピート構造は3属で一致していたが、SEMG2は属ごとに異なるリピート数をもつことがわかった。この結果は、人類学の国際誌に発表した。また、SEMGsにおけるリピート数の変化による機能的意義は未解明であるため、ヒトを含む類人猿のSEMG1をin vitroで合成し、抗微生物効果の検証のための実験系の確立を試みた。「抗菌」効果は、大腸菌の増殖を指標とし、「抗ウイルス」効果は、DNA型ウイルスとしてヒトヘルペスウイルス4、RNA型ウイルスとしてヒトT細胞指向性ウイルスの感染効率と増殖効率を指標とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
分子サイズが大きいためか、試験管内でのチンパンジーの精しょうタンパクの合成に成功していない。
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今後の研究の推進方策 |
チンパンジーの精しょうタンパクの合成がうまくいっていないので、同じ属のボノボでPan属を代表させ、Homo, Pan, Hylobates, Macacaの比較研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度計画していた各種SMGタンパク合成実験が、Pan troglodytesにおいて滞っていたため、種間での比較研究に至らなかった。この問題をPan paniscusを使うことで解消し、H31年度の配分助成金と合わせ、タンパク合成・機能解析の比較研究の実験費用に充当する。
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