研究実績の概要 |
客観性と定量性を担保した実験系に基づき「霊長類の精液凝固の定量」をおこない、「生殖関連分子と霊長類社会」を検証するのが本研究の目的である。具体的には、精液凝固の担い手である精しょうタンパクSMGの遺伝子構造を、異なる社会構造を示す多種の霊長類で決定、試験管内でタンパク合成・凝集をおこない定量化し、社会構造との関連を評価する。その際、複数の社会型を示す種については、遺伝的多様性と社会型の可塑性について、dispersal・婚姻居住パタンの観点から検討し、「遺伝的支配」の有無を検証する。 HapMap projectのJPT,CHB,CEU,YRIのサンプル(n=193)においてヒトSEMG1のリピート数多型を調べ、系統解析を行った。その結果、変異型のsemg1は同祖的であり、長期間各集団において維持されてきたことが示唆された。また、婚姻体系(母方居住婚をする民族と父方居住婚をする民族)の異なるタイの少数民族について、変異型の頻度を比較したところ有意な差は見られなかった。 タンパク質の機能解析のため、SEMG1タンパク質の合成系を確立し、ヒト野生型SEMG1(6リピート)、ヒト変異型SEMG1(5リピート)、Pan属SEMG1、人工的に作成した4リピートのヒトSEMG1のタンパク質を合成した。
|