研究課題/領域番号 |
18K19360
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
石田 貴文 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (20184533)
|
研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2022-03-31
|
キーワード | 霊長類 / 社会構造 / 精しょうタンパク / 多様性 / 無細胞タンパク合成 |
研究実績の概要 |
昨年度までは、客観性と定量性を担保した実験系に基づき「霊長類の精液凝固の定量」をおこない、「生殖関連分子と霊長類社会」の関連を検証するため、精液凝固の担い手である精しょうタンパクSMGの遺伝子構造・リピート数を、異なる社会構造を示す多種の霊長類で決定してきた。そのデータに基づき、リピート数の生理学的意義をヒトSEMG1について検討した。 Rs7270676を欠失変異 (5リピート)のタグとして、オセアニア系・ヨーロッパ系・アフリカ系集団で検索し、5リピートの頻度分布は概ね5%であった。リピート部分を除いたSEMG1の全長配列を用いた系統樹から、rs7270676-Cを含むハプロタイプ は地域集団によらず1つのクレードに集まり、SEMG1の多様性(5リピート)は人類の拡散前に誕生し維持されてきた多型であると考えられた。 次に、リピートの生理学的意義を探るため、4 リピート, 5リピート (変異型), 6リピート (野生型)のSEMG1タンパク質を合成し、以下の予備実験を策定、検討した。3種のrecombinant SEMG1に対し、1)何もしない場合、2) Factor XIIIaを添加し凝固させた場合、3)PSAを添加し液化させた場合の抗菌作用およびウイルス複製干渉を比較することとした。抗菌作用の測定には、E.coliを、ウイルスの複製干渉の測定にはEB ウイルスを指標とした。抗菌作用に関しては明らかな結果が得られなかった。 E B ウイルス複製に関しては、6リピートSEMG1に第13因子を作用させた後、PSAによる消化をした系でウイルスDNAコピー数が多い傾向にあったが、さらなる検証を要すると思われる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
コロナ過で、1)海外のデータ収集が出来なかったこと、2)自宅待機で充分な実験が出来なかったため。
|
今後の研究の推進方策 |
欠失変異 (5リピート)の分布調査をさらに進め、民族基質・婚姻体系をの関連を探り、ヒトにおけるSEMG1の進化を考察する。 リピートの生理学的意義に関しては、予備実験の結果に基づき、実験系の再考をし作用の確認を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ過のため研究期間を延長し、いくつかの研究計画を次年度へ持ち越したため。
|