研究課題/領域番号 |
18K19363
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
伊藤 健彦 明治大学, 研究・知財戦略機構, 研究推進員 (50403374)
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研究分担者 |
杉本 太郎 鳥取大学, 乾燥地研究センター, プロジェクト研究員 (20570493)
木下 こづえ 京都大学, 野生動物研究センター, 助教 (50724233)
飯島 慈裕 三重大学, 生物資源学研究科, 准教授 (80392934)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | 移動生態学 / 哺乳類 / 草原生態系 / 季節移動 / モンゴル |
研究実績の概要 |
動物の移動の総合的な理解・解明を視野に入れ、モンゴルの草原地帯に生息する哺乳類モウコガゼルを対象に、動物の詳細な移動・活動データと環境条件の時空間変動解析に、定期的な糞ホルモン・DNA分析を加え、「環境→生理→行動」の流れの解明を目指す。 2018年度には、モウコガゼル追跡用の機器を選定・購入し、9月末から10月初めにモンゴルの草原地帯でモウコガゼルの成獣メス9頭を捕獲し、追跡用首輪を装着した。新規に購入した首輪6台では、2時間間隔で位置データを取得するとともに、3軸加速度センサーによる活動量データも取得する設定とした。 2019年3月末現在、9頭すべてが生存中であり、位置データを順調に取得できている。別プロジェクトにより過去2年間、同一地域で捕獲・追跡した個体では、冬に約300km南に移動した例が多かったが、今年度のすべての追跡個体では南下した距離が短く、積雪等の環境条件の年変動が反映されている可能性がある。 捕獲直後(2018年10月)と、2019年1月にホルモン分析用のモウコガゼルの糞採集を実施し、計画したサンプル数の採集に成功した。上述したように、秋から冬にかけての明瞭な長距離移動期が観察されなかったため、移動期のホルモン状態の分析に適したサンプル採集にはならなかったが、詳細なリアルタイム追跡データにより、長距離を遊動的に移動するため鮮度の高いサンプルの採集が難しかった本種での、定期的な糞採集が高い確率で実現可能であることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
対象種の計画頭数への追跡機器装着に成功し、すべての個体でのデータ受信が順調である。過去の追跡データとは異なる移動パターンが得られ、環境条件の年変動と移動パターンの関係の解明への興味深いデータとなりそうである。挑戦的な課題であった、遊動的な種の定期的な糞採集にも成功し、今後も継続的に採集できる見通しが立った。
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今後の研究の推進方策 |
モウコガゼルの追跡は次年度いっぱい継続する。捕獲から1年間の追跡が完了した時点で、移動データと環境情報データから、移動パターンの判別や生息地選択要因の解析をおこなう。ホルモン分析用の糞採集は、春の移動期、夏の滞在期(出産期)、秋の移動期に実施し、糞中のホルモン濃度を分析する。採集した糞が、家畜のヒツジやヤギまたは別種のガゼルではなく、モウコガゼルのものであることを確認するために、DNA分析による種判別を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
モウコガゼルの秋から冬にかけての移動期の糞採集を計画していたが、本年度は明瞭な移動期が観察されなかったため、その時期の糞サンプル採集調査を実施しなかった。次年度のサンプル採集は夏までの計画であったが、差額を使用して次年度に、秋から冬にかけての移動期のサンプル採集調査を実施する予定である。
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