研究課題
本研究は、アオミドロなどの糸状性の多細胞体制をもつ種と二次的に単細胞に進化したヒメミカヅキモなどの種を含むシャジクモ藻綱ホシミドロ目に注目し、多細胞体制の維持と機能分化に関わる転写因子を特定し、複雑な細胞分化を遂げた陸上植物への進化において原動力となった要因を提案することを目的としている。単細胞藻類ヒメミカヅキモについては、ゲノム解析と遺伝子アノテーションにより得られた約29000の遺伝子の中で、54種類のtranscription factor family (TF)と22種類のtranscription regulators (TR)の存在を確認した。その結果、NAC転写因子がシャジクモ目に比べて顕著に数を増やしていること、GRAS転写因子がホシミドロ目において初めて獲得されたことなどが明らかになった。また、C2C2 Zn-finger motifとHMG domainをもつYABBY遺伝子と思われる遺伝子の存在が見出された。YABBY遺伝子は、これまで種子植物へと進化した植物で獲得された転写調節因子と考えられていたが、遥かに原始的な藻類段階ですでに獲得され、現存する陸上植物の多くの系統でロストしたことが強く示唆された。糸状性のアオミドロについては、フィールドから新たに単離した株の中から、顕微測光分析により、比較的ゲノムサイズが小さい株(0.5~1.5 Gbp)を発見した。生活環を制御しつつ、比較transcriptome解析を行うための材料調製を現在進めている。また、従来法によるアオミドロからのRNA抽出は、効率が悪く、精製度が低いという欠点があったが、ヒメミカヅキモと同様の方法をアオミドロに適用したところ、比較的良好なRNA抽出に成功した。
3: やや遅れている
ヒメミカヅキモについては、従来、種子植物特異的と考えられてきたYABBY遺伝子の発見に繋がる知見が得られつつあるなど、順調に進んでいるが、アオミドロについては、比較transcriptome解析を行うための材料調製がまだ完了しておらず、そのためRNA抽出もまだ済んでおらず、やや遅れていると判断した。
ヒメミカヅキモのYABBY遺伝子の系統解析および逆遺伝学的解析を行う。また、アオミドロにおいて、この遺伝子ホモログが存在しているかを調べる。アオミドロにおいては、比較Transcriptome解析、発現遺伝子のde novo アセンブルを進め、逆遺伝学的解析を行うための基盤を整理する。
糸状性のアオミドロについては、フィールドから新たに単離した株の中から、顕微測光分析により、比較的ゲノムサイズが小さい株(0.5~1.5 Gbp)を発見したが、そこにいたるまでに多くの時間を費やしてしまった。またRNA抽出について、これまで満足出来る条件が確立していなかったため、サンプル解析依頼を出す目処が立たなかった。今年度は、これらにほぼ目処が立ったため、RNA-seq, de novo assemble, 発現解析、逆遺伝学的解析に予算を使用する。
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