研究課題/領域番号 |
18K19367
|
研究機関 | 総合地球環境学研究所 |
研究代表者 |
陀安 一郎 総合地球環境学研究所, 研究基盤国際センター, 教授 (80353449)
|
研究分担者 |
申 基チョル 総合地球環境学研究所, 研究基盤国際センター, 准教授 (50569283)
|
研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
|
キーワード | 安定同位体 / 生態系ストイキオメトリー / 非伝統的同位体 |
研究実績の概要 |
本研究においては、マグネシウム、亜鉛、カルシウム、ストロンチウムなどの安定同位体比分析を検討している。 まず、Mg安定同位体比の測定については元素分離法の確立、MC-ICP-MSを用いた測定法の開発が終わり、環境標準試料を用いた評価を行った。元素分離では回収率が95%以下になるとカラム内部で同位体分別が起きて、測定値が変わることが分かった。そのため全試料について回収率を確認する作業が必要である。同位体比の測定法としては標準試料-未知試料-標準試料の挟み込み法を採択しているが、試料/標準の濃度比が1.0~1.2の範囲では安定することが分かった。 Znの同位体比の測定については陰イオン交換樹脂を用いた分離精製法の検討を行った。MC-ICP-MSを用いた測定法については銅添加法を試した。この方法はダブルスパイク法より操作が簡単で、十分な精度が得られる利点がある。亜鉛と銅の濃度比は測定値に大きな影響を与えないことが確認された。また、試料/標準の濃度比によって測定値が変わらないことも確認され、標準物質を用いた評価でも非常に安定した結果を得た。 Ca安定同位体比の分析法については陽イオン交換樹脂を用いた元素分離法の確立まで行うことができた。表面電離型質量分析装置を用いた測定法については42Caと43Caを用いたダブルスパイク添加法の検討を行った。タングステンフィラメントは安定した測定ができるが、39Kのブランクが高くて高精度分析には使えないことが分かった。その代わり高純度レニウムフィラメントでは信号の安定性はタングステンよりやや悪いが39Kのブランク信号は出なかったので今後の測定にはレニウムフィラメントを採用することになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マグネシウム同位体比の分析法の開発は済んでいるので未知試料の測定を行っている。しかし、分析の基準になるプライマリー標準物質(DSM3)の枯渇によってこれからの測定に支障が出てくる可能性があるのでワーキングスタンダードとしてRIHN-Mgの評価を行った。 亜鉛同位体の分析については元素分離法と測定法の確立までできた。様々な環境標準物質を用いて分析法の評価まで行うことができた。亜鉛の場合もプライマリー標準物質(JMC3702)の枯渇で入手できなかったのでAA-ETH Znという新しい標準物質を用いて測定を進めている。 カルシウム同位体分析法ではフィラメントの確認、ダブルスパイクを用いた測定法の確認まで行っている。標準海水試料を用いて分析法の評価を行うところまで進行している。
|
今後の研究の推進方策 |
非伝統的な同位体は、試料の分析に関する前処理、カラム分離、同位体分析、いずれの過程においても困難がつきまとうので、処理数を確保するのが難しい。本研究においては、新たな研究領域を開拓するために、少ない分析数であっても新たな観点を提示したいと考えている。現在のところ、地質特徴が違う二つの河川流域を対象にして両方の生態系での各種同位体の挙動の差異にについて研究を進行している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度は研究の準備にあたり分析手法の検討に重きを置いた経費利用を行なった。今後はこの手法を適用して野外研究を進める予定である。
|