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2018 年度 実施状況報告書

脳小血管病の3D病理解析基盤の確立

研究課題

研究課題/領域番号 18K19373
研究機関新潟大学

研究代表者

田井中 一貴  新潟大学, 脳研究所, 教授 (80506113)

研究期間 (年度) 2018-06-29 – 2020-03-31
キーワード脳小血管病 / 組織透明化 / 神経病理 / 3Dイメージング
研究実績の概要

ヒト脳組織の透明化プロトコルは、組織の外液浸透性を亢進させるための脱脂処理と、外液-組織の屈折率の均一化を図る屈折率調整の2段階からなる。1 cm3を超える大きな白質病変部位における毛細血管の立体的な配向変化を可視化するためには、現行の脱脂プロトコルでは脱脂効率が不十分である。そのため、高速の脱脂プロトコルを新たに開発する必要がある。また、種々のケミカルプローブや3D免疫染色技術を駆使して脳小血管病の病態解明に取り組むためには、現行の透明化手法で生じるヒト脳組織の褐変による低い可視光透過率やリポフスチンや残留血液などによる広い波長領域における強度の自家蛍光を解決しなければならない。そこで、本年度は、高速の脱脂プロトコルを開発すると共に、組織側の光学的課題を克服するために、透明化ヒト脳組織の褐変を抑制することで可視光透過性の向上させ、かつ組織の自家蛍光を高効率に褪色させる透明化プロトコルの開発に取り組んだ。
既に我々が実施した透明化試薬の網羅的なケミカルプロファイリングから見出したアルキルジオールを用いたところ、現行の脱脂試薬よりも遥かに脱脂速度が速いことが分かった。また、脱脂処理では、高温で処理するため、メイラード反応様に組織が褐変する。メイラード反応に伴う架橋反応を、還元剤やシッフ塩基捕捉剤を含む脱脂試薬を用いることで効率的に褐変を抑制することができた。また、興味深いことにこれらの化学処理を施したヒト脳組織は高度に自家蛍光が褪色していることが示された。この結果より、ヒト脳組織を特異的ケミカルプローブおよび3Dホールマウント免疫染色法により標識する技術基盤が確立された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

懸案であった白質の脱脂を効率的に遂行する脱脂試薬を見出した結果、白質脱脂に要する期間が大幅に短縮された。本試薬は、脱脂強度が強いにもかかわらず、目立った組織の損傷・抗原性の劣化もなく、理想的な脱脂試薬である。今後、3D病理解析において、一般的に広く使用されるポテンシャルを秘めている。また、ヒト脳剖検サンプルの光学的課題である1)透明化後の褐色状の呈色、2)リポフスチンに代表される強度な自家蛍光、を効率よく抑制する透明化プロトコールが得られた。このプロトコールは、グリア細胞や髄鞘、血管、軸索に加えて、老人班やリン酸化タウといった病変マーカーのホールマウント免疫染色・ケミカルプローブ染色に適用可能である。以上の結果から、脳小血管病の病態解明を推進するための技術基盤が確立された。

今後の研究の推進方策

上述の通り、脳小血管病の病態解明を推進するための技術基盤が確立された。今後は、微小血管の蛍光イメージングと共にNF, MBP, GFAP, Iba1などの3Dホールマウント免疫染色を組み合わせることで、血管および関連因子の包括的3D解析基盤の確立に取り組む。更に、連携研究者の柿田と共に、孤発性動脈硬化性白質脳症やラクナ梗塞の白質病変部位における毛細血管の立体的な配向変化や周囲を取り囲むグリア細胞の空間分布を解析することで、各種脳小血管病の病理像を体系化する。また、脳小血管病において、血液脳関門(blood-brain barrier: BBB)の機能破綻との関連の理解は、本症における重要な課題の一つである。そこで、BBBを司る Glial vascular unit との関係性について明らかにすると共に、毛細血管の収縮、BBBの形成、機能に関与することが知られている周皮細胞の分布との相関を調べることで、脳小血管病におけるBBBの破綻に関与する分子機構の解明に取り組む。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)

  • [雑誌論文] Chemical Landscape for Tissue Clearing Based on Hydrophilic Reagents.2018

    • 著者名/発表者名
      Tainaka K, Murakami TC, Susaki EA, Shimizu C, Saito R, Takahashi K, Hayashi-Takagi A, Sekiya H, Arima Y, Nojima S, Ikemura M, Ushiku T, Shimizu Y, Murakami M, Tanaka KF, Iino M, Kasai H, Sasaoka T, Kobayashi K, Miyazono K, Morii E, Isa T, Fukayama M, Kakita A, Ueda HR.
    • 雑誌名

      Cell Rep.

      巻: 24 ページ: 2196-2210.e9

    • DOI

      10.1016/j.celrep.2018.07.056.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] CUBIC: Whole-brain/body imaging with single-cell resolution using hydrophilic chemical cocktails2019

    • 著者名/発表者名
      Kazuki Tainaka
    • 学会等名
      BRI The 9th international symposium
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 組織透明化技術CUBICによる3D神経病理学2018

    • 著者名/発表者名
      田井中一貴
    • 学会等名
      日本ケミカルバイオロジー学会 第13回年会
  • [学会発表] 組織透明化技術CUBICによる3D神経病理学2018

    • 著者名/発表者名
      田井中一貴
    • 学会等名
      第107回日本病理学会総会
    • 招待講演
  • [学会発表] 水溶性試薬による組織透明化の化学2018

    • 著者名/発表者名
      田井中一貴
    • 学会等名
      第12回バイオ関連化学シンポジウム
  • [学会発表] Development of 3D neuropathology based on tissue clearing technique2018

    • 著者名/発表者名
      Kazuki Tainaka, Rie Saito, Akiyoshi Kakita
    • 学会等名
      ICN2018, 19th International Congress of Neuropathology
    • 国際学会

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公開日: 2019-12-27  

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