こどもの脳の発達は急速かつ柔軟であるが、経験とともに脳が発達する仕組みには未だ不明な点が多い。本研究では、経験により脳内を移動するホメオ蛋白質に注目し、情動の発達の仕組みを探究した。大人は恐怖の記憶を忘れられないが、幼い子は恐怖の記憶を忘れやすい(幼児健忘)。成体マウスに恐怖を連想させる音と模様を記憶させると、ホメオ蛋白質の欠損マウスは模様に対する恐怖を感じにくかった。一方、音に対する恐怖は感じられるが、記憶を忘れやすかった。この際、ホメオ蛋白質は恐怖の記憶を担う回路を移動し、回路の機能発達を促した。今後、本研究で開発した回路の可視化技術を用い、恐怖体験とホメオ蛋白質の移動の関連を解明する。
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