本研究の目的は、野生型および遺伝子改変マーモセットを確実かつ低コストで作製する技術を開発し、実験動物としての汎用化を達成することである。そのために、3つの項目について研究協力者の中務胞及び﨑村建司と作業分担して研究を行った。第1は、マーモセット成熟卵子・受精卵の安定的生産法開発、第2は、異種間移植卵子による脳疾患モデル作製、第3は、ナイーブ化ES細胞の樹立と胚盤胞補完法による遺伝子改変動物の作製である。まず、異種卵巣移植による、卵子の安定取得法を標準化するため、マーモセット組織提供の協力機関である、理研、東大、京大、群馬大等から供与された卵巣をnude mice腎被膜下に移植し、条件を検討した。移植片の生着効率に及ぼす卵巣側条件は採取後冷蔵保存し48時間以内の移植が生着に重要であることが明らかになった。次に、生着した移植卵巣から成熟卵子を取得するには、nude miceへ隔日にFSH投与、その後のhCG投与で採卵が好成績となることがわかった。これまでに卵子取得の基本的条件は策定できたが、次の段階である“安定して受精卵を発生させる条件”に関しては試行錯誤中である。次に、脳疾患モデルマーモセット作製の基盤技術を達成するため、受精卵でCRISPR/Cas9システムを用いて確実に遺伝子欠損を惹起する条件の検討をおこなった。ラット及びマウス胚を用いて、複数のガイドRNAを用いることで高効率遺伝子欠損を引き起こす条件を見いだした。さらに、胚盤胞補完法による遺伝子改変動物作製のための受容マウス胚の生産をおこなった。この受容胚を用いて、理研・慶応大岡野研より供与されたマーモセットES細胞のキメラ作製能の検討を行った。これまでに細胞側の培養条件を変え複数回のキメラ作製実験を行ったが、キメラ個体は得られておらず、さらなる検討が必要である。以上のように本研究は、計画通り概ね順調に進捗している。
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