研究課題/領域番号 |
18K19376
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
新明 洋平 金沢大学, 医学系, 准教授 (00418831)
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研究分担者 |
河崎 洋志 金沢大学, 医学系, 教授 (50303904)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | フェレット / 脳回 / CRISPR/Cas9 |
研究実績の概要 |
ヒトなどの高等哺乳動物では大脳皮質は特に発達しており、表面には明瞭なしわ(脳回)が存在する。脳回の獲得は脳機能の発達の基盤であると考えられており、従ってその形成メカニズムの解明は神経科学の重要研究課題の一つである。イタチ科に属するフェレットは、脳回や眼優位性カラムなど高等哺乳動物に特徴的な発達した脳神経構築を持つことから形態学的および生理学的研究に多く用いられてきたが、分子遺伝学的研究は解析手法が確立されておらず遅れていた。我々は、フェレットでの分子遺伝学的解析を可能とするために、子宮内電気穿孔法を応用しフェレット大脳皮質への遺伝子導入法を確立している。さらに最近我々は、子宮内電気穿孔法とCRISPR/Cas9システムとを組み合わせることにより、フェレット大脳皮質特異的な遺伝子ノックアウト法を確立した。本研究では、この独自技術を用いて脳回形成機構の解明を目指す。最初に、ヒト滑脳症の原因遺伝子として知られているCdk5遺伝子を標的として、脳回形成機構の解析を行った。フェレット脳の発生において、出生約一週間後に大脳表面に凹凸構造が観察され始め、出生16日後にははっきりとした脳回が観察される。そこで、妊娠31日目のフェレット大脳皮質にCdk5に対するCIRSPRコンストラクトを子宮内電気穿孔法により導入した。生後16日目で脳を固定し、形態学的に脳回に異常があるかどうかを調べた。その結果、脳回の低形成が観察された。これらの結果から、Cdk5が脳回形成に必須であることが明らかとなった。以上の結果から、フェレットにおいて本手法が脳回研究に有用であることが明らかになった。今後、Cdk5やDraxin遺伝子の機能解析から、脳回形成メカニズムについてさらに詳細に解析したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フェレットにおいてCRISPR/Cas9システムを利用した遺伝子ノックアウト法が脳回形成に有用であることを示すことができたから。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究から、大脳皮質の脳室下帯に存在する神経前駆細胞から産出される上層神経細胞が脳表に移動することが脳回形成に必須であることを明らかにした。今後、脳回形成における軸索投射の重要性を検証したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
費用がかかるフェレットの実験を次年度に行うことにしたため。当該年度は、安価なマウスを用いた研究を中心に行い、フェレットでの実験に移行するための基礎的データを蓄積した。
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