研究課題/領域番号 |
18K19379
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
久保 健一郎 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 准教授 (20348791)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | 大脳皮質 / 白質神経細胞 / 細胞移動 / 発生 |
研究実績の概要 |
白質内の神経細胞をマウスにおいて作成するための条件検討を行うとともに、これまでに確立したマウス子宮内電気穿孔法を用いた部位特異的神経細胞ラベル法(Tomita*/Kubo*, et al., Hum.Mol. Genet., 2011、Ishii*/Kubo*, et al., J. Neurosci., 2015)に加えて、最近開発されたフラッシュ・タグ法を改変した新たな手法を用いて、脳内の異なる領域の細胞移動を同時に可視化するための条件検討を行った。その結果、独自に開発した、胎児期の代表的な環境要因である胎児虚血のモデルマウスにおいて、これまでに注目していなかった領域においても白質神経細胞の増加を伴う、神経細胞移動の変化を見出した。 また、正常に灰白質へ移動した神経細胞は、移動の最終段階において、リーリン分子をはじめとする脳の最表層にしか存在しない分子に反応して、その性質が大きく変わると考えられる。その際の神経細胞動態を明らかにするために、従来のマウス子宮内電気穿孔法を用いた神経細胞の可視化による解析を行い、辺縁帯の直下に移動してきた神経細胞が哺乳類特異的なインサイドアウトパターン(遅生まれの細胞ほど最終的に深層に位置し、早生まれの細胞ほど浅層に位置する)の配列を行いながら、神経細胞同士が密に接着した凝集構造が形成されることを見出した。さらに電子顕微鏡を用いた解析を行うことにより、発生中の大脳新皮質における辺縁帯の直下では、比較的未成熟な神経細胞同士が直接その細胞体同士で密に接着した凝集構造が形成されることを明らかにして報告した(J. Comp. Neurol., 2019)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最近開発されたフラッシュ・タグ法を改変した新たな手法を用いて、脳内の異なる領域の細胞移動を同時に可視化するための条件検討を行ったところ、独自に開発した胎児期の代表的な環境要因である胎児虚血のモデルマウスにおいて、これまでに注目していなかった領域においても白質神経細胞の増加を伴う、神経細胞移動の変化を見出した。当初予期していなかった、予想外の方向への研究の進展ではあるが、この所見に基づきながら、今後当初の目的である異所性の白質内の神経細胞に生じる分子的変化を明らかにしていくことができるため、初年度としては順調な進展であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに確立したマウス子宮内電気穿孔法を用いた部位特異的神経細胞ラベル法(Tomita*/Kubo*, et al., Hum.Mol. Genet., 2011、Ishii*/Kubo*, et al., J. Neurosci., 2015)に加えて、最近開発されたフラッシュ・タグ法を改変した新たな手法を用いて、異所性に存在する白質内神経細胞を蛍光タンパク質でラベルする。蛍光タンパク質でラベルされた細胞を、FACSで回収するか、脳の組織切片から標的部位の細胞を切り出しするレーザー・マイクロダイセクション(LMD)法を用いて、正常に灰白質へ移動した細胞と比較して、白質内に留まる神経細胞に生じる遺伝子/分子的変化を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品や実験用動物の効率的な調達と使用が可能であったため。引き続き、消耗品や実験用動物の効率的な調達と使用を行いながら、次年度の研究計画目標の確実な達成に努める。
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