研究実績の概要 |
白質内の神経細胞をマウスにおいて作成するための条件検討を行うとともに、これまでに確立したマウス子宮内電気穿孔法を用いた部位特異的神経細胞ラベル法に加えて、最近開発されたフラッシュ・タグ法を改変した新たな手法を用いて、脳内の異なる領域の細胞移動を同時に可視化するための条件検討を行った。そして、その結果、これまでは均一であると考えらえていた、新皮質における細胞移動が、実は脳の領域によって、かなり違いが大きいことが明らかになった。また、この差が大きい時期と、さほど違いがない時期があることも新たに見出した。このように、時期と領域による神経移動について、新規手法を用いて詳細に観察し、その結果をまとめて、論文として投稿準備中である(Yoshinaga, et al., in preparation)。加えて、これまでマウス子宮内電気穿孔法ではラベルが難しかった脳領域についても、時期による神経移動と配置について、この新規手法を用いて詳細に観察し、その結果をまとめて、論文として投稿準備中である(Oshima, et al., in preparation)。 また、これまでに白質内神経細胞が増加する独自のモデルとして報告している、胎児期虚血のモデルマウスを用いて、移動の障害が生じる神経細胞の分子プロファイルの変化についての解析を進めた。実際には、マウス子宮内胎児電気穿孔法等を用いて、発達中のマウス胎仔脳の神経細胞に蛍光タンパク質を発現するプラスミドを導入することによって、あらかじめ神経細胞の可視化を行っておいた。生後の胎児期虚血のモデルマウスと対照群のマウスの脳から、蛍光タンパク質を用いてセルソーターによって移動中の神経細胞を抽出したのち、それらの細胞からRNAを抽出してマイクロアレイ解析を行った。現在、その結果についての解析と検証を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに確立したマウス子宮内電気穿孔法を用いた部位特異的神経細胞ラベル法(Tomita*/Kubo*, et al., Hum.Mol. Genet., 2011、Ishii*/Kubo*, et al., J. Neurosci., 2015)に加えて、最近開発されたフラッシュ・タグ法を改変した新たな手法(Yoshinaga, et al., in preparation)を用いて、独自に開発したモデルマウスにおいて異所性に存在する白質内神経細胞を蛍光タンパク質でラベルする。これらの蛍光タンパク質でラベルされた細胞を中心として、それらの脳領域における分子的な変化を明らかにしていく。これまでに、蛍光タンパク質でラベルされた細胞を、FACSで回収して、それらの細胞からRNAを抽出してマイクロアレイ解析を行い、分子的な変化の候補を得ているため、現在、その結果について進めている解析と検証を引き続き遂行して、正常に灰白質へ移動した細胞と比較して、白質内に留まる神経細胞に生じる分子的変化を明らかにする。
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