研究実績の概要 |
生体内では、活性酸素や活性窒素をはじめとする化学反応に富んだ分子種が、様々な生理機能や疾病の発症に関与していることが明らかとなっている。このような反応性が高い分子は、酵素の介在を必要とせず、瞬時に生体分子と反応することが可能であることから、生体外異物に対する防御機構においても、代謝酵素の誘導が起こる前の即時的な防御に寄与していることも想定されている。 代表者は、これまで生体必須微量ミネラルであるものの非常に毒性の高いセレンという元素が、過剰に細胞に曝露された場合に、内在性のシアンが生成し、セレンの毒性を防御していることを示唆する結果を得て、この内在性のシアンを、その反応性の高さから活性シアン種(reactive cyanogen species, RCNS)と名付けた。これまでもいくつかの報告で内在性のシアンが生成することが指摘されていたが、その生成の分子機構は明らかにされていない。また古来より、生体にとって毒性の高い物質として知られるシアンが生体の中で生合成され、まさに毒を以て毒を制すという解毒機構がシステムとして機能しているのか、セレン以外にもRCNSの基質となり得る生体外異物はあるのか、などの毒性学的意義も未解明であった。 そこで本研究の目的は、従来法を凌駕する好感度の細胞内シアンの検出方法を確立すること、生体内でどのようにRCNSが生合成されているのかの分子機構を明らかにすること、RCNSが生体外異物に対する解毒システムとしてどのように機能しているのかを明らかにすること、の3点とした。 上述の3つの研究目的に対応して、(1)内在性シアンの高感度分析法の確立、(2)ほ乳類細胞内におけるシアン生成の分子機構の解明、(3)異物代謝におけるRCNSの機能の解明、の3つの研究を実施した。
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