研究課題/領域番号 |
18K19388
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
浅井 禎吾 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (60572310)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | 天然物 / ペプチド / 異種発現 / 糸状菌 / 生合成 |
研究実績の概要 |
糸状菌の非リボソームペプチド合成酵素 (NRPS) がつくり出すペプチド二次代謝物 (天然物) は、抗真菌剤Echinocandin Bや免疫抑制剤Cyclosporin Aなどの有用活性物質が多く、最も魅力的な医薬資源の一つである。また、サイトカラシン類などPKS-NRPSハイブリッド型酵素によって生産されるポリケチドとアミノ酸がペプチド結合を介して連結した天然物も医薬品や生物実験ツールとして重要な化合物群である。一種の糸状菌ゲノム上には、多数のNRPS遺伝子やPKS-NRPSはブリッド型遺伝子がコードされている。すなわち、糸状菌全体では膨大な数のペプチド結合を有する天然物を創生すると期待される遺伝子が存在する。しかし、実際にはごく一部の遺伝子に由来する天然物しか獲得に至っていない。したがって、本研究では、ゲノムマイニングと異種発現を基盤として、ゲノム上に膨大に取り残された新規ペプチド結合含有天然物の開拓を目指した。 ユニークな遺伝子資源を得るために、植物や昆虫に内生する糸状菌を獲得し、それらを培養後、ゲノムDNAを調整し、次世代シーケンス解析を行った。既存のNRPS遺伝子やPKS-NRPSハイブリッド遺伝子を指標にゲノムマイニングを行い、糸状菌からは全く単離例のないDL交互型ペプチド天然物を生合成すると予想される独創的なNRPS遺伝子群を含む、ペプチド結合を有する独創的な天然物をコードすると期待される数多くの生合成遺伝子の発見に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
異種発現を基盤とする天然物探索や創生研究では、遺伝子資源の獲得が大変重要である。 現在、ユニークな遺伝子資源を数多く見出し、それらを含む遺伝子クラスターの解析も終え、現在、クラスターの発現に着手している。3年間で、独創的なペプチド結合を有する天然物の創生の基盤作りが順調に進行しており、次年度以降は異種発現に勢力的に取り組める所まで来ている。このため、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
ゲノムマイニングで見出したDL交互型NRPS天然物をコードすると期待される遺伝子から着手する。エピメリ化ドメインが隔モジュールに配置されたNRPS遺伝子は、イントロンを含めると25 kbpから40 kbp程度と、非常に大きな遺伝子である。現在、複数のフラグメントにわけ、In fusion反応によるベクターの構築に加え、共同研究によりIn vitroベクター複製系であるRCRを用いた巨大遺伝子導入ベクターの一挙構築法を検討している。ベクター作製後は、麹菌に形質転換し、目的遺伝子導入株の探索と、導入遺伝子由来の天然物の探索を行う。NRPS遺伝子のみの発現で物質生産が確認されない場合は、周辺の遺伝子との共発現系の構築を行い、本タイプの物質生産に必要な遺伝子に関する知見を得る。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究は概ね順調に進行しているが、遺伝子解析などドライな実験が中心であったため、当初の計画より研究費が必要ではなかった。しかし、今後は、遺伝子組み換え実験や有機実験などが当初の計画よりも増えることが予想されるため、統合して考えると、本申請額は妥当であると言える。
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