前年度までに、sp2 カルバニオンを用いてジボロン試薬を活性化することで、分子内アルキンへのジボリル化反応が温和な条件下にて進行することを見出し、新しい含ホウ素多環式芳香環化合物である 1-ボラフェナレン類が高収率にて得られることを見出していた。今年度は、計算化学と分光学の支援の下、光学活性 1-ボラフェナレン化合物を設計・合成し、種々の光化学的性質を精査した。中でも、不斉蛍光発光(CPL)を高い効率で発することを見出し、これらの新しい化合物群が機能性材料として有望であることを示した。本成果は Angewandte Chemie International Edition 誌(DOI: https://doi.org/10.1002/anie.202009242)に掲載された。 また、ケイ素試薬を sp2 カルバニオンで活性化する戦略にて、ケイ素含有芳香環化合物の合成法開発にも取り組んだ。かさ高いジオール配位子を有する新しい環状ケイ素試薬をデザイン・合成し、ケイ素アート錯体(シリカート)形成時の立体反発の解消を駆動力とする選択的ヒドリド配位子の転移反応を実現した。本反応を用いた分子内ヒドロシリル化反応によって、様々なシロール類、ベンゾシロール類、さらにはこれまで合成が困難とされてきたシラフェナレン類の化学選択的な合成法を開発した。本成果は Journal of the American Chemical Society 誌(DOI: https://doi.org/10.1021/jacs.0c12619)に掲載された。
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