研究課題/領域番号 |
18K19394
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
吉田 栄人 金沢大学, 薬学系, 教授 (10296121)
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研究分担者 |
伊従 光洋 金沢大学, 薬学系, 准教授 (20608351)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | マラリア / バキュロウイルス / 自然免疫 / インターフェロン |
研究実績の概要 |
マウスにP. bergheiスポロゾイト1,000匹を静脈に感染接種し、24 or 42時間後にバキュロウイルス(BV)を筋注接種したところ、24時間後では100%のマウスがマラリア発症から免れた。一方、42時間後ではすべてのマウスがマラリアを発症した。しかし、発症が大きく遅延していた。つまり、BV筋注により誘導された自然免疫応答が肝臓期マラリア原虫を排除していることが明らかとなった。プリマキン処理(0.1 mg)では、感染24時間後の肝臓内原虫を排除することはできなかった。BV効果がプリマキンを上回っていることが明らかとなった。 BV接種6時間後のマウスの血中にはIFN-aおよびIFN-gが分泌されていた。そこで、この2つのサイトカインに注目してBV接種マウスの血清に抗IFN-a抗体あるいは抗IFN-g抗体を加えて中和した後に別の正常マウスに移入したところ、抗IFN-a抗体処理では100%のマウスがマラリア発症から免れ、抗IFN-g抗体処理ではその程度は低下し発症遅延のみが確認された。IFN-aはIFN-gの上流に有り、別のエフェクター分子の発現にも重要であると考えられる。さらに、IFN-aあるいはIFN-gのレセプターをノックアウトしたマウスでのマラリア原虫感染実験を行ったところ前述の中和抗体と同様に、IFN-aレセプターノックアウトマウスではマラリア排除効果が消失した。IFN-gレセプターノックアウトでも排除効果が減少したが、依然として発症遅延効果は維持されていた。今年度の結果より、BVが誘導する抗肝臓期マラリア原虫活性はIFN-aからのシグナル伝達による自然免疫応答メカニズムが大きく関与することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では下記の3点について計画が立案されている。このうち、(A), (B)および(C)の一部が解明された。 (A)治療効果(感染→BV接種)プリマキンとの比較:BVによる肝臓期マラリア原虫の排除効果は、プリマキン(WHO推奨)よりも治療効果があるのか? (B)感染防御効果(BV接種→感染):BV接種後どのくらいの期間感染を防御できるのか?これにより自然免疫応答の持続性を明らかにする。 (C)自然免疫応答メカニズム解析:BVにより誘導される液性因子には治療効果がある分子が含まれるのか?筋注接種部位である大腿部で活性化した自然免疫応答が(i)どのような経路で肝臓にシグナルを送り、(ii)どんなエフェクター因子が肝臓期原虫を殺傷するのか? (D)肝臓期原虫殺傷メカニズムの解析
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今後の研究の推進方策 |
研究計画(C), (D)を重点的に実施する。 (C)自然免疫応答メカニズム解析:筋注接種部位である大腿部で活性化した自然免疫応答が(i)どのような経路で肝臓にシグナルを送り、(ii)どんなエフェクター因子が肝臓期原虫を殺傷するのか? (D)肝臓期原虫殺傷メカニズムの解析:重要な肝臓内因子の存在、特に新規pathwayが想定されればそのKOマウスを準備する。現時点では、自然免疫応答による肝臓期原虫殺傷メカニズムは「TLR-9非依存的・Type-I IFN依存的」およびNK細胞の関与も推察している。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年11月に予定していた国際学会での成果発表が特許出願に間に合わずにキャンセンルになった。2019年2月に投稿した論文が採択されることを見越して掲載料を用意していたが、採択が3月末になったために支払いが2019年4月以降にずれ込んだ。2019年度は、国際学会での成果発表および論文掲載料に繰越金を使用する予定である。
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