創薬標的分子の探索研究において、「脳全体の中から精神疾患の発症に特に重要な個々の細胞の分子レベルの特性」を見出すことが必要である。そこで本研究では、「脳機能の破綻に最も重要な細胞群を同定し、その時空間的な分子レベルの細胞特性を計測する斬新な方法論を確立」し、さらに「従来細胞集団の平均値でしか記述出来ていない分子レベルの特性を打破し、ストレス耐性を獲得させる新たな概念や機序の創薬標的分子の提唱を目指すことを目的としている。本年度は、神経細胞を機能依存的及び回路依存的に蛍光標識し、個々の約200個の神経細胞のシングル細胞RNAシークエンス解析を行い、個々の細胞の分子特性を明らかにした。また、解析結果から得た標的候補分子のRNA発現を、in situ hybridization法によりマウス脳内局在を明らかにした。特に、オープンソースのRNA発現データベースを用いて、取得した遺伝子発現情報から、細胞集団を特定する方法を構築し、既存のデータベースの細胞集団の中に、亜集団があり、細分化できることを示した。これらの結果は、本課題で代表者らが構築した治療標的分子の探索方法の精度が高いことを示唆している。今後は、本方法を用いて、様々な精神疾患モデル脳を解析することにより、これまで見逃されてきた精神疾患の治療標的候補分子を提唱するなど、創薬研究に貢献することが期待できる。
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