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2019 年度 実施状況報告書

4Dケミカルヌクレオミクス基盤技術の開発

研究課題

研究課題/領域番号 18K19402
研究機関大阪大学

研究代表者

堀 雄一郎  大阪大学, 工学研究科, 准教授 (00444563)

研究期間 (年度) 2018-06-29 – 2021-03-31
キーワードゲノム配列 / 核酸結合色素 / Zinc finger
研究実績の概要

ある特定のDNAの配列を生きた細胞内で可視化することは、ゲノム動態と生体機能の相関を明らかにするうえで、極めて有用である。我々は、合成分子とタンパク質を駆使することで、特定のDNA配列を可視化する技術の開発に取り組んできた。前年までの研究において、ゲノム編集技術でDNA配列認識ドメインとして用いられる蛋白質であるCAS9の変異体dCAS9もしくはTALEにDNA結合色素を導入した色素/タンパク質ハイブリッドプローブを構築し、TALE由来のハイブリッドプローブが、標的DNA配列に結合し、蛍光強度を上昇させることを明らかにした。なお、DNA結合色素のような合成分子をタンパク質に導入するために、PYPタグラベル化技術を用いた。本年度は、更に、もう一つのゲノム編集ツールであるZinc fingerをPYPタグに融合し、DNA結合色素を導入したハイブリッドプローブについて検証した。
まず、Zinc fingerとPYPタグの融合タンパク質にDNA結合色素とPYPタグリガンドの連結分子が結合するかを吸収スペクトル測定により確認した。その結果、リガンドがPYPタグに結合したことを示す446 nmの吸光度が上昇した。この結果から、Zinc fingerとDNA結合色素からなるハイブリッドプローブが構築されたことが分かった。次に、ゲルシフト法により、ハイブリッドプローブがDNAに結合するかを調べたところ、DNAが標的配列を含む時、選択的にこれらの分子の複合体を示すバンドが確認された。この結果、ハイブリッドプローブは標的DNAに結合することが分かった。蛍光測定の結果、ハイブリッドプローブは、標的配列との結合に伴い蛍光強度が上昇することが分かった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

これまでに、TALEから構成されるハイブリッドプローブのみDNAに結合し蛍光強度が上昇することが分かっていた。本年度の研究により、もう一つのゲノム編集技術であるZinc fingerからなるハイブリッドプローブが構築され、このハイブリッドプローブは、TALEのときと同様に、蛍光強度を上昇させることを示した。このことは、DNAの可視化を行ううえで、より多くのツールを選択でき、汎用性に繋がることが期待できる。以上の結果から、本年度の研究の進展は、おおむね順調であると判断した。

今後の研究の推進方策

これまでの研究で、ハイブリッドプローブは、導入する核酸結合色素の種類により、一定程度の蛍光を発することが分かっている。一方、用いた核酸結合色素は、PYPタグに結合していないときは、完全な無蛍光であるため、色素がPYPタグの表面のどこかと相互作用し、蛍光を発していることが考えられる。実際に、ドッキングシミュレーションを行うと色素とPYPタグの相互作用が示唆されるデータが得られている。この相互作用に伴う蛍光は、バックグラウンドシグナルとなり、S/N比を低下させる。そこで、色素がPYPタグのどこと相互作用し、蛍光を発しているかを突き止め、相互作用が起こらないように、PYPタグを改変する。その結果、DNA配列の検出S/N比を向上させる。

次年度使用額が生じた理由

ドッキングシミュレーションの結果、色素とPYPタグの相互作用が見つかり、PYPタグを改変するもしくは色素を改変することで、相互作用を抑制し、DNA配列検出のS/N比を向上させることができる可能性が生まれた。そこで、これらの実験を実施するための経費が生じた。
次年度は、リガンドと核酸結合色素を繋いだ分子を合成・精製するための試薬の購入経費として2,000,000円、開発した分子を用いた生化学実験のための試薬の購入経費として1,000,000円、ゲノムイメージングのための細胞生物学試薬の購入経費として1,017,031円を支出する予定である。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件)

  • [雑誌論文] Development of Fluorogenic Probes for Rapid High-Contrast Imaging of Transient Nuclear Localization of Sirtuin 32020

    • 著者名/発表者名
      Gao J, Hori Y, Shimomura T, Bordy M, Hasserodt J, Kikuchi K
    • 雑誌名

      Chembiochem

      巻: 21 ページ: 656-662

    • DOI

      10.1002/cbic.201900568

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Live-Cell Imaging of Protein Degradation Utilizing Designed Protein-Tag Mutant and Fluorescent Probe with Turn-Off Switch2020

    • 著者名/発表者名
      Gao J, Hori Y, Takeuchi O, Kikuchi K
    • 雑誌名

      Bioconjug Chem

      巻: 31 ページ: 577-583

    • DOI

      10.1021/acs.bioconjchem.9b00696

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Rapid no-wash labeling of PYP-tag proteins with reactive fluorogenic ligands affords stable fluorescent protein conjugates for long-term cell imaging studies2020

    • 著者名/発表者名
      Kumar N, Hori, Y. Nishiura M, Kikuchi K
    • 雑誌名

      Chem Sci

      巻: 11 ページ: 3694-3701

    • DOI

      10.1039/D0SC00499E

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Engineered Protein-tag for Rapid Live-cell Fluorogenic Visualization of Proteins by Anionic Probes2020

    • 著者名/発表者名
      Gao J, Hori Y, Nishiura M, Bordy M, Hasserodt J, Kikuchi K
    • 雑誌名

      Chem Lett

      巻: 49 ページ: 232-235

    • DOI

      10.1246/cl.190875

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Chemical Tools with Fluorescence Switches for Verifying Epigenetic Modifications2019

    • 著者名/発表者名
      Hori Y, Kikuchi K
    • 雑誌名

      Acc Chem Res

      巻: 52 ページ: 2849-2857

    • DOI

      10.1021/acs.accounts.9b00349

    • 査読あり

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公開日: 2021-01-27  

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