研究課題/領域番号 |
18K19405
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
山田 健一 九州大学, 薬学研究院, 教授 (60346806)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | 薬学 / 細胞死 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、「全く新しい細胞死形態フェロトーシスの誘導に脂質ラジカルが関与し、そして疾患を誘発する」、との仮説を明らかにすることである。 フェロトーシスは、アポトーシスでもネクローシスでもない新しい細胞死形態である。その誘導には、脂質過酸化物が関与している。ここで、脂質過酸化物の生成開始点は、「脂質ラジカル」である。加えて、連鎖反応により爆発的に増幅される。これまで申請者らは、この脂質ラジカル阻害に対する化合物スクリーニング系の構築に成功している。そこで本研究では、「新しい細胞死形態フェロトーシスにおける脂質ラジカルの関与と疾患発症との関連性」、について明確にすることを目的とする。 本年度は、1)フェロトーシス誘発時に脂質ラジカルは産生しているか、について重点的に検討した。 1)フェロトーシス誘発時に脂質ラジカルは産生しているか 本目的のために、まず、我々が開発した脂質ラジカル検出プローブを用いて、フェロトーシス誘導時に脂質ラジカルが生成しているか検討した。培養細胞をフェロトーシス誘導剤であるRSL3あるいはエラスチン刺激したところ細胞死が生じ、このとき脂質ラジカル産生していることがわかった。さらに、この脂質ラジカル検出蛍光プローブを用いて培養細胞での蛍光イメージングを行ったところ、細胞膜あるいは小胞体にて脂質ラジカルが生成していることがわかった。さらに非常に興味深いことに、このプローブを添加するのみで、フェロトーシスを有意に抑制したことから、フェロトーシス原因分子を捉えている可能性が示唆された。また、一方で、フェロトーシスは用いる培養細胞の種類によってその感受性は大きく異なること、さらに飽和あるいは不飽和脂肪酸の添加によっても感受性が変化することがわかった。 このことは、培養細胞における脂肪酸の組成がフェロトーシス感受性に大きく関与していることを示唆するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、フェロトーシス誘発時に脂質ラジカルが生成しており、その抑制によりフェロトーシスを軽減できることを見いだした。また、その産生部位は細胞膜、あるいは小胞体でであることもわかった。以上の結果より、現時点で提案した研究項目はほぼ順調に進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は以下の項目について重点的に研究を進める。 1)フェロトーシス誘発時に脂質ラジカルは産生しているか 脂質ラジカルが関与していてことから、これらを指標にフェロトーシス抑制剤の探索を進める。 2)フェロトーシスが疾患発症に関与しているか 実際に疾患モデルにおいてフェロトーシスが生じているか、その際に脂質ラジカルは関与しているのか、などについて検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、主に基本的な実験条件の検討を主としたため、次年度使用額が生じている。次年度は、スクリーニングおよび動物実験など応用研究へと展開を予定している。
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