研究課題/領域番号 |
18K19412
|
研究機関 | 大阪薬科大学 |
研究代表者 |
天滿 敬 大阪薬科大学, 薬学部, 教授 (90378787)
|
研究分担者 |
近藤 直哉 大阪薬科大学, 薬学部, 助教 (80756172)
平田 雅彦 大阪薬科大学, 薬学部, 講師 (00268301)
|
研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
|
キーワード | 分子マシン / 18F-FDG / セラノスティクス |
研究実績の概要 |
近年、外部エネルギー付与により分子構造の一部が高速回転する分子マシンの基本構造が報告され、最近では、培養がん細胞膜上に集積した分子マシンが紫外線照射により高速回転し、細胞死を惹起する可能性が報告された。我々は、18F等のポジトロン放出核種が生じるチェレンコフ光が紫外可視光領域にエネルギースペクトルを有することに着目した。すなわち、チェレンコフ光を用いた生体内での分子マシン駆動が可能となれば、18F-FDGを用いたPET診断によりがん病変を検出し、その後にがん組織に分子マシンを送達することで、18F-FDGと分子マシンが共局在するがん部位においてのみ分子マシンが細胞傷害性を獲得する、革新的な連続的がん診断・治療法の開発に繋がると期待できる。 本研究課題の目的は、18Fにより生じるチェレンコフ光による分子マシン駆動に関する基盤原理構築および細胞・生体レベルでの有効性の実証にある。 本年度は上記の検証に必須となるがん標的分子マシンの設計・合成を中心に研究を遂行した。外部エネルギーにより回転するモーター部位については既報に従って合成を行い、分子モーター合成法の確立、及び、今後の実験に必要となる化合物量の確保に成功した。がんへの選択的な分子マシン集積性を担う標的認識部位については、がん細胞膜上に発現する分子を標的とする数種のペプチドを設計し、その有効性について発現細胞、モデル動物を用いた体内動態評価を行った。分子標的ペプチドに関して得られた成果の一部は、学会発表において公表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題においては、1. がん標的分子マシンの設計・合成、2. インビトロ評価/基盤原理構築、3. がん標的分子マシンを用いたインビボ評価、の3項目について研究を進捗するよう実施計画を掲げている。 本年度においては、外部エネルギーにより回転するモーター部位について既報に従い合成を行い、分子モーター合成法の確立、及び、今後の実験に必要となる化合物量の確保に成功した。がんへの選択的な分子マシン集積性を担う標的認識部位については、がん細胞膜上に発現する分子を標的とする数種のペプチドを設計し、その有効性について発現細胞、モデル動物を用いた体内動態評価を行った。分子標的ペプチドに関して得られた成果の一部は、学会発表において公表した。さらに、本研究においてモーター駆動エネルギーとして利用する18F-FDGについては、所属機関のRI研究施設においてマウスを用いた動物実験を行い、18Fの放射能測定やチェレンコフ光強度の測定など本研究の推進に必要な実験体制を確立するとともに、18F-FDGの体内動態評価などチェレンコフ光の源となる基礎的評価を行った。 以上をまとめると、1. がん標的分子マシンの設計・合成については概ね完了しており、2. インビトロ評価/基盤原理構築については分子標的ペプチドと標的細胞の組み合わせ等基礎的な評価を始めている。3. がん標的分子マシンを用いたインビボ評価については18F-FDGを用いた基礎的評価を始めている。 したがって、本研究課題はおおむね順調に進展していると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
がん標的分子マシンの設計・合成については、概ね完了しているため、今後は、インビトロ評価/基盤原理構築、及び、がん標的分子マシンを用いたインビボ評価を中心に研究を進める。 インビトロ評価/基盤原理構築については、細胞を用いた実験により、a) がん細胞への18F-FDG取り込み、b)がん標的分子マシンの抗原認識によるがん細胞膜への接近、c) 18F-FDGのチェレンコフ光エネルギーによる分子マシン駆動および細胞壊死誘導、といった本研究課題で提唱する一連のメカニズムを追跡する。また分子マシン駆動について、チェレンコフ光エネルギーとUV照射強度との相関を細胞実験により詳細に調べることで、インビボでの分子マシン駆動に必要となるチェレンコフ光エネルギーと放射能集積量の推察を行う。また、標的認識分子となるペプチドの候補より、がん選択的な集積を示すペプチドを細胞実験により選抜し、がん標的分子マシンの最適化を行う。インビボ評価としては、がん標的分子マシンの体内動態が未だ明らかにされていないため、放射標識したがん標的分子マシンを合成し、モデル動物における体内動態を調べるとともに、がん標的分子マシンの体内挙動・組織内局在と18F-FDGの局在を比較する。最終的には、担がんモデル動物に対し18F-FDGを投与しがん組織への集積を確認後、がん標的分子マシンを投与し、①生体内での18Fチェレンコフ光分子マシン駆動、及びそれが引き起こす、②がん組織体積の縮退効果(治療効果)、を経時的に追跡する。摘出した腫瘍組織は病理学的解析を行いインビボにおける分子マシン治療法の有効性を検証する。以上により、18Fから生じるチェレンコフ光による分子マシン駆動に関する基盤原理構築および細胞・生体レベルでの有効性を実証する計画である。
|