研究課題/領域番号 |
18K19418
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
柴崎 貢志 群馬大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (20399554)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | TRPV2 / 温度 / メカノセンサー / 神経 / 発生 |
研究実績の概要 |
急性脳スライス標本を低酸素・低グルコース環境に暴露することで、その脳容積が急激に増大する脳浮腫モデルを確立した。また、東京大学薬学部の小山グループと共同研究を行い、急性脳スライス標本の脳浮腫モデルにおける温度測定を行った。その結果、正常脳(コントロール)と比較し、脳浮腫領域では約2℃も温度上昇することを突き止めた。この温度上昇はどのようなメカニズムで生じるのかについても調べた。脳浮腫に伴い、虚血性のグルタミン酸放出が生じることが報告されている。これがニューロンを異常興奮させ、局所発熱を引き起こしているのではないかと予想した。そこで、脳浮腫モデルにグルタミン酸受容体の阻害薬を投与し、発熱に変化が起こるのかを定量的に調べたところ、この場合には発熱が生じず、脳浮腫も有意に抑制された。逆に、正常脳スライス標本に過剰なグルタミン酸を投与すると2℃の発熱が惹起し、脳浮腫も生じた。これらのことから、脳浮腫領域での発熱には、虚血性のグルタミン酸放出とニューロンの過興奮が関連し、発熱が起こると脳浮腫が引き起こされることが判明した。 昨年度再生中の軸索内部に他領域よりも2℃高いホットスポット(=39℃)が局在することを見いだした。そこで本年度は、この39℃というホットスポット温度がTRPV2を活性化し、軸索再生を促すのかを個体レベルで検証した。感覚/運動神経特異的なTRPV2欠損マウス(TRPV2CKOマウス)を用いた。妊娠したWTとTRPV2CKOマウスの腹腔内にカニュレーション手術を施し、そのカニューレから温水を循環させることで37℃(生理学的温度)と39℃(ホットスポット温度)で生体内の胎仔を発育させた。そして、胎仔を取り出して、前足をホールマウント染色し、その軸索長を定量比較した。その結果、生理的温度である37℃発育時にはWT群とTRPV2CKO群の間に軸索長の有意な差は生じなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
発生期の軸索内部に温度不均一性が存在することを発見した。さらに、脳浮腫領域で特異的な発熱が生じることも見出した。この発熱には、虚血性のグルタミン酸放出とニューロンの過興奮が関連し、発熱が起こると脳浮腫が引き起こされることも見出した。
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今後の研究の推進方策 |
TRPV2CKOマウスの交配がうまく進んでおらず、このためこれらのマウスを用いた個体実験が遅れており、充分なサンプル数解析が出来ていない。本年度はマウスを交配させ、これらの個体実験に取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
TRPV2CKOマウスを用いて、細胞内温度イメージング・個体実験を行う計画を立案していたが、マウスの交配状況が著しく悪く、マウスがほとんど出産してしない。このため、必要なマウスの が得られておらず、予定通りにが行えていない。このため、本年度必要なマウスを交配によって得て、その後に当初計画していた実験を行う必要がある。残額は、実験に必要な試薬や器具の購入、交配用マウスの購入にあてる。
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