研究実績の概要 |
研究実施者は、52℃以上の熱刺激を感知するセンサーとして知られていたTRPV2イオンチャネルが発達期神経の軸索・成長円錐に高発現しており、軸索伸長時に 生じる膜伸展刺激により活性化し、細胞外からCa2+を流入させ軸索伸長を促進していることを見いだした(J. Neurosci. 2010、JBC 2014, JPS 2016、FASEB J 2017)。 本研究課題の遂行により、申請者が作製した感覚神経特異的なTRPV2KOマウス(TRPV2CKOマウス)を用いて、損傷神経の再生能を比較したところ、野生型(WT)マウスと比較して、TRPV2CKOでは軸索再生が著しく減弱することを見いだした。急性スライス標本を用いた実験から、脳内にまばらに存在する高温領域(hot spot)は脳血流が存在しない状態でも生じることが証明された。研究実施者らは1細胞レベルで温度分布を可視化するシステムを構築した。この系では、fluorescent polymeric thermometerを培養細胞や急性脳スライス標本に取り込ませた後で2波長蛍光イメージングを行い、インキュベーション温度に対する検量線を元に細胞内部の温度を0.02℃の精度と500 nmの解像度で解析が可能である。培養神経細胞を生理学的温度(37℃)にインキュベートした際に1細胞内の温度分布がどのような局在を示すのかを解析した。脳スライス標本の温度イメージング実験から、脳浮腫に伴う局所発熱によるhot spotの形成にはグルタミン酸とその受容体が関与することを明らかにしている。このため、調製した細胞にグルタミン酸を投与し、温度上昇を示す細胞群を特定した。
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