研究実績の概要 |
細胞内におけるATP合成酵素の回転を直接計測するための基盤技術の開発のため、プローブの3次元配向と位置を高時空間分解能で検出するイメージングシステムの開発を行った。細胞内においては、酵素は細胞膜中を3次元に移動、拡散するため、これまでのサンプル平面に固定した酵素の計測システムでは、細胞内のFoF1-ATP合成酵素の回転計測に適用できなかった。そこで、これまでのプローブの3次元配向に加え、3次元位置(x,y,z)を正確に計測する手法の開発に取り組んだ。測定系として高速配向検出暗視野顕微鏡を組み、解析方法を発展させた新規のイメージングシステムの評価を行った。水溶液中を拡散する金ナノ粒子1粒子の散乱光を10 μsの時間分解能で撮影し、散乱像を理論的に計算された画像にフィッティングすることにより、その配向と位置の解析を行った。その結果、金ナノ粒子の拡散は、位置、回転、共に、理論的に予想される拡散定数を持つ自由拡散の式に従うことが明らかになった。このことは、ナノメートルの精度、マイクロ秒の分解能で、金ナノ粒子の位置と配向を3次元で追跡可能であることを示している。しかし、拡散粒子の散乱像はカメラの検出範囲を数10 msで外れてしまうため、次により長時間の計測を目的として、試料の3次元位置をリアルタイムに追跡して試料位置のフィードバックをする手法の開発に取り組んだ。ミリ秒のオーダーでステージ位置をフィードバックする必要があるが、高速にプローブの3次元位置を検出して位置情報に変換する手法、高速で駆動できる軽量ピエゾステージの作成、及び、このシステムの検証は順調に進んでおり、長時間粒子の配向と位置を3次元で検出する目途が立った。
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