研究実績の概要 |
我々は、骨格筋分化における遺伝子の空間的配置は「増殖段階における遺伝子発現抑制」と「分化過程における転写誘導」の2役を担う遺伝子発現制御機構として必須であることを報告している(Harada et al, NAR, 2015)。また、近年、癌形成過程で遺伝子の空間配置が変化することが明らかとなり、組織レベルでの一細胞内遺伝子空間配置情報の解明が喫緊の課題となっているが、heterogeneityを持つ細胞群では1細胞ごとのデータを取得し解析することが必要であるが現段階で実用レベルの技術が存在していない。本研究では、精度の高い空間配置情報を安定的に得るために、ハイスループットな1細胞空間配置解析手法である3D-ChILTの開発を行っている。 本年度は、本研究の3D-ChILTの開発において根幹となるゲノムDNAへのTn5トランスポゼースを用いた標識法について検討および論文化(Harada et al, NCB, 2019)を行った。3D-ChILT法の原型のChIL法を用いたシークエンス技術ChIL-Seqの開発では、100,000細胞から単一細胞までのエピゲノムシークエンス解析が可能なプロトコルを開発し発表した(Harada et al, NCB, 2019)。特に単一細胞解析用にTn5トランスポゼースの反応量を適正化したことで、3D-ChILTにそのプロトコル直接用いることができ、3D-ChILTのプロトコルにおける、Tn5トランスポゼースを用いた細胞識別配列の挿入による各DNAドメインの分離法の確立が期待できる。また、各DNAドメインの標識化において、combinatorial indexing法を採用し、次世代シークエンスを用いたシークエンスプロトコルを確立した。
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