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2018 年度 実施状況報告書

鉄代謝システムの包括的理解をめざした鉄代謝関連分子の網羅的同定

研究課題

研究課題/領域番号 18K19433
研究機関熊本大学

研究代表者

諸石 寿朗  熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 准教授 (30647722)

研究期間 (年度) 2018-06-29 – 2020-03-31
キーワード鉄代謝 / ゲノム編集 / ライブラリースクリーニング
研究実績の概要

本年度の研究では、予備的研究にて構築した細胞内鉄量可視化システムを用いて、細胞内の鉄量を蛍光タンパク質の発現量に変換するレポーター細胞の作出に取り組んだ。HEK293細胞に必要な遺伝子発現コンストラクトを導入し、細胞クローニングと目的タンパク質の発現・機能確認を繰り返した後に、機能的なレポーター細胞を得た。このレポーター細胞は単一の細胞に由来し、細胞内の鉄量が多い時には強い緑色の蛍光を発し、逆に細胞内の鉄量が少ない時には蛍光を発しなかった。さらに、このレポーター細胞はゲノム編集を可能とするCas9タンパク質を薬剤誘導性に発現するように工夫されている。実際に、特定のガイドRNAをレポーター細胞に導入すると、薬剤を入れた後に対応する遺伝子領域のゲノム編集が確認された。また、これと並行して全ゲノムを対象としたガイドRNAを発現するレンチウイルスライブラリーも作製した。これらの研究ツールを用いることで、未知の鉄代謝関連分子を遺伝学的な手法で網羅的にスクリーニングすることが可能となった。さらに、スクリーニングの後に得られた候補分子の分子機能解析に利用するため、細胞内鉄量が増加・減少する遺伝子変異マウスの解析も進めており、この過程で鉄代謝の肝発がんにおける役割も明らかにした。肝臓における鉄の過剰は化学発がんや肝炎ウイルスのマウスモデルにおいてがんの進行を強力に促進することがわかり、がんの病態における鉄代謝制御の重要性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究では、CRISPRライブラリーを用いた遺伝学的スクリーニングを行うことで細胞内の鉄量の変化に影響を与える分子を網羅的に抽出することを計画している。この目的のためには、同一細胞にヘムエリスリンとGFP遺伝子の融合タンパク質(予備的な研究により細胞内の鉄量に応じて蛍光タンパク質の量が変化することを確認しており、スクリーニングの際の鉄量モニターの役割を果たす)、および、tetレプレッサーとテトラサイクリン誘導性のCas9発現コンストラクト(誘導性にCas9を発現させる)を導入する必要があり、本年度は次のような手順でレポーター細胞の作出に取り組んだ。1. ヘムエリスリンGFP融合タンパク質をHygromycin薬剤選択を利用してHEK293A細胞に導入し、その後単一細胞のクローニングを行った。2. 得られた40以上のクローンから、鉄量によるGFP発現の変化を指標に、最適な1クローンを選定した。3. 選定した細胞にtetレプレッサータンパク質(Neomycin選択)、テトラサイクリン誘導性のCas9発現コンストラクト(Blasticidin選択)を導入し、再度単一細胞のクローニングを行った。4. 得られた100種以上のレポーター候補細胞の中から、Cas9の発現誘導性を指標に、5個程度の候補を絞りこんだ。5. それぞれの細胞に既知のsgRNA配列を導入し、CRISPRによる遺伝子欠損の効率を指標に最終的なレポーター細胞を選定した。これらに並行して、全ゲノムを対象としたCRISPRのsgRNAレンチウイルスライブラリー(Puromycin選択を利用して導入する)の調整も終了した。さらに、本スクリーニングで得られた候補分子の個々の分子機能解析に利用するため、細胞内鉄量が過剰となるFBXL5欠損マウス、および、細胞内鉄量が減少するIRP2欠損マウスの解析も進めている。

今後の研究の推進方策

次年度は、本年度の研究によって得られたレポーター細胞とレンチウイルスライブラリーを用いてCRISPR変異細胞ライブラリーを作出し、実際に次世代シーケンサーを利用して全ゲノムを対象としたライブラリースクリーニングを行う。本年度は、レポーター細胞の作出にあたり、2度のクローニングや個別の検証に多くの時間を要したが、本研究計画2年間のマイルストーンである「細胞内鉄代謝に影響を与える鉄代謝関連分子の抽出と機能分類」は次年度中に達成できると期待される。さらに、スクリーニングで得られた候補分子の個々の分子機能に関しても、細胞内鉄量が過剰となるFBXL5 KOマウス、および、細胞内鉄量が減少するIRP2 KOマウスを用いて検証する。

次年度使用額が生じた理由

商品キャンペーンによる価格低下等の理由により当該年度予算に残額が生じたが、次年度使用額は予定していた当該年度の所要額の1割程度で、概ね計画通り予算を使用し研究が進んでいる。次年度も引き続き必要な消耗品等の物品を購入し、研究計画を遂行する。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2019 2018 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Disruption of FBXL5-mediated cellular iron homeostasis promotes liver carcinogenesis2019

    • 著者名/発表者名
      Muto Yoshiharu*、Moroishi Toshiro*、Ichihara Kazuya、Nishiyama Masaaki、Shimizu Hideyuki、Eguchi Hidetoshi、Moriya Kyoji、Koike Kazuhiko、Mimori Koshi、Mori Masaki、Katayama Yuta、Nakayama Keiichi I. (*Equal contribution)
    • 雑誌名

      The Journal of Experimental Medicine

      巻: 216 ページ: 950~965

    • DOI

      10.1084/jem.20180900

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Regulation of mitochondrial iron homeostasis by sideroflexin 22018

    • 著者名/発表者名
      Mon Ei Ei、Wei Fan-Yan、Ahmad Raja Norazireen Raja、Yamamoto Takahiro、Moroishi Toshiro、Tomizawa Kazuhito
    • 雑誌名

      The Journal of Physiological Sciences

      巻: 69 ページ: 359~373

    • DOI

      10.1007/s12576-018-0652-2

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [備考] 熊本大学 大学院生命科学研究部 分子酵素化学講座

    • URL

      https://www.moroishi-lab.com

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公開日: 2019-12-27  

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