研究課題/領域番号 |
18K19436
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
東 秀明 北海道大学, 人獣共通感染症国際共同研究所, 教授 (20311227)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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キーワード | タンパク質分子立体構造 / 人工分子 |
研究実績の概要 |
炭疽の予防法として、無莢膜弱毒炭疽菌の芽胞懸濁液が動物用炭疽生ワクチンとして世界で広く利用されている。このワクチンは、動物では炭疽予防に一定の効果を示す一方、ヒトに対しては重篤な副作用を示す。一部の国では、炭疽菌毒素の一つProtective antigen(PA)を利用した無細胞炭疽ワクチンをヒトに使用しているが毒性を有することから実用性に乏しい。本研究では、新規ヒト炭疽ワクチン開発を目的として、炭疽菌毒素PAの多量体構造情報を基にin silico 分子計算手法を用い、ワクチン抗原候補分子を人工分子として設計した。これまでに、組換え体タンパク質として大腸菌内に産生させた人工分子を高度精製し、約2 mgの精製人工分子を調製した。さらに精製分子をin vitroで2量体化させた多量体化人工分子を用い、メルボルン大学においてマウス免疫試験を実施した。マウスを用いた免疫試験で得られた血清において、人工分子は全長PAとほぼ同等の抗原性を示し、かつ同等以上の毒素中和活性を示すことが示された。免疫原性の強さに関しては全長PAと大きな差はみられなかったが、人工分子においてはPA毒性発現に関わる細胞膜結合領域が欠失していることから、現行のワクチンで問題となっている毒性問題を解決できる抗原であると予想された。免疫効果を高めるため、メルボルン大学で開発されたアジュバントが人工分子抗原のワクチン効果に与える影響を検討する計画だが、COVID-19感染拡大により実施を見合わせている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究においては、動物を用いた免疫試験を行うことが必要であり、設計された人工分子の大量かつ高度に精製された試料が必須である。この点においては、当初の目標をはるかに上回る試料の調製に成功した。また、人工分子の試験管内多量体化反応においても、予想された結果を得ることができた。加えて、人工分子の免疫原性がマウスにおいて確認され、2020年よりタンパク質構造を基盤とした人工抗原分子の作成及び評価を完了する予定であった。メルボルン大学で採取された免疫血清を用い、炭疽毒素の中和試験を計画しているが、COVID-19感染拡大のため共同研究者の活動がロックダウンにより大きく制限され、加えて日豪間の移動が認められず共同研究を延期せざるなかった
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今後の研究の推進方策 |
・人工抗原により誘導された抗体の評価を継続する(毒素中和試験等)。 ・ In silico 分子計算によって作出された人工抗原分子の立体構造を、高分子NMR解析、X線構造解析の手法によって決定し、in silico 分子設計の妥当性を検証する。得られた検証結果を基にin silico分子設計の精度向上を試みるとともに、抗原性の増強を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、共同研究先であるメルボルン大学で使用する試薬及び消耗品は、本学で購入、負担する予定であったが、平成30年度は先方が所有していた物品により研究が実施されたため、予算の執行額が予定より少額となり、残額を次年度使用とした。
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