研究課題/領域番号 |
18K19444
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
小林 剛 大阪大学, 微生物病研究所, 准教授 (90324847)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | ノロウイルス / ロタウイルス / ワクチン |
研究実績の概要 |
ノロウイルス(NoV)は、冬季の感染性胃腸炎の主な原因ウイルスである。NoVでは、効率の良い培養細胞を用いたウイルス増殖系が開発されていないことから、基礎研究は進んでおらず、ワクチンも実用化されていない。本研究では、独自に開発した新規ロタウイルス(RV)遺伝子改変技術を駆使することで、NoVおよびRVに対する経口粘膜ワクチンの開発基盤の確立を目的とする。 本年度は、最初に外来遺伝子発現RVの改良を行った。外来遺伝子は、RV NSP1のN末端27アミノ酸(NSP1 1-27)との融合タンパク質として発現されるが、NSP1 1-27配列が外来遺伝子の細胞内局在に影響することが明らかとなった。そこで、NSP1 1-27配列の開始コドン(ATG)に変異(ATG→ATC)を加えた組換えRVの作製を試みたがウイルスは得られなかった。NSP1 RNAの2次構造モデルからNSP1 1-27配列の開始コドンに含まれるG33が3’末端付近に位置するC1556と相互作用することが予測されたため、相補的な変異であるC33およびG1556変異を導入したところ、ネイティブな外来遺伝子を発現する組換えRVの作製に成功した。この系を応用し、NSP1遺伝子にNoV VP1遺伝子(GII.4型)を挿入した組換えウイルスの作製を行った。培養細胞にNoV VP1タンパク質を発現するRVを感染させ、感染細胞でVP1タンパク質の発現を確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、効率かつ安定的に外来遺伝子を発現できるロタウイルス(RV)の作製に成功した。この系を応用し、ノロウイルスVP1タンパク質を発現する組換えRVの作製に成功した。これらの成果はRVワクチンベクター開発研究に有用と考えられる。 上記の成果から、研究目的を達成する上で本年度の研究計画は概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
1)感染細胞におけるノロウイルス(NoV)VP1発現およびNoV ウイルス様粒子(VLP)形成の確認を行う。得られたNoV VP1発現ロタウイルス(RV)を培養細胞に感染後、免疫電子顕微鏡手法によりRV粒子およびNoV VLPの観察を行う。 2)NoV VP1発現RVのマウスへの経口投与後のRVおよびNoV VP1に対する免疫応答の確認を行う。得られたNoV VP1発現RVを用いてマウスへの経口感染を行う。感染マウス血清および腸管リンパ節からのリンパ球の採取を行い、in vitroにおいてNoV VP1抗原の免疫応答を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)本年度は実験経過の都合上(異なる遺伝子型由来ノロウイルスVP1遺伝子の人工合成や電子顕微鏡解析研究の延期のため)、研究費に繰越金が生じた。そのため、次年度は本年度に購入できなかった消耗品を購入する予定である。 (使用計画)次年度請求金額については、申請書に沿って、今後の推進方策を実施するため、人工遺伝子合成や電子顕微鏡解析等を含む実験に必要な実験試薬を購入する。
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