研究課題
ノロウイルスは、冬季の感染性胃腸炎の主な原因ウイルスである。ノロウイルスでは、効率の良い培養細胞を用いたウイルス増殖系が開発されていないことから、基礎研究は進んでおらず、ワクチンも実用化されていない。本研究では、独自に開発したロタウイルス遺伝子改変技術を駆使することで、ノロウイルスおよびロタウイルスに対する経口ワクチンの開発基盤の確立を目的とする。前年度は、効率よく安定的に外来遺伝子を発現できるロタウイルスベクターの改良を行った。これまでのシステムにおいて、外来遺伝子はロタウイルス NSP1タンパク質のN末端27アミノ酸との融合タンパク質として発現されるが、NSP1タンパク質の開始コドンならびに開始コドンと相互作用するNSP1 3’末端領域に変異を導入し、本来のロタウイルスNSP1のRNA2次構造を保持することで、ネイティブな外来遺伝子を発現する組換えロタウイルスの作製に成功した。本年度は、この系を応用し、NSP1遺伝子にノロウイルス VP1遺伝子全長(GII.4型)を挿入した組換えウイルスを作製し、性状解析を行った。その結果、感染細胞でVP1タンパク質の発現を確認することができた。また、感染細胞から密度勾配遠心法により、組換えウイルスの精製を行ったところ、ノロウイルス様粒子と予想される画分を得た。現在、得られた画分について電子顕微鏡解析を行うとともに、作製した組換えウイルスを実験動物に接種し、中和抗体の産生能について解析を行っている。さらに、他の異なるノロウイルス遺伝子型由来のVP1遺伝子を挿入した組換えウイルスの作製を試みた。これらの成果は、ロタウイルスを粘膜ワクチンベクターとして応用する上で有用と考えられる。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
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