研究課題
特定の遺伝子の活性を、「ある時空間のみ変異させ」、将来どのような効果をもたらすかの検定の重要性は言うまでもない。例えば、B細胞の場合胚中心(GC)反応を経て、メモリー細胞が形成されるわけであるが、GCの過程で生じる変化が、メモリー細胞機能にどのような影響を与えるかは非常に重要な命題にもかかわらず、この命題へのアプローチが困難を極めている。ある酵素の阻害剤は、in vivo投与した場合、その特異性を十分に担保さすことが非常に困難である。又、個体の中で、どの細胞の酵素を阻害して、表現系が表出しているのかを特定できない。従って、その結果の解釈に常に疑義がはさまれることになる。この特異性の点を克服するために、本研究では酵素遺伝子サイドに変異を加え、この阻害剤の特異性を飛躍的に上昇させ、この変異遺伝子と新規阻害剤の組み合わせで、可逆的in vivo阻害をおこなおうとするものである.具体的には、変異PI3Kdeltaを特異的に阻害する低分子化合物のスクリーニングを行ったが、目的の化合物をえることはできなかった。従って、strategyを変えて、P13Kの一番重要なエフェクター分子である、mTORC1をターゲットにした。mTORC1は低分子化合物rapamycinによって阻害されるが、このrapamycinによって阻害を受けない変異mTORC1が存在することを見つけ、このmTORC1変異体ではrapamycinを投与してもmTORC1の阻害を受けないことを確認した。さらに、野生型細胞との共存で、rapamycin投与したところ、たしかに、この変異mTORC1を導入した細胞のみ、mTORC1阻害がかかったことを確認した。
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