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2019 年度 実施状況報告書

オレキシン・HLAクラスII分子複合体によるナルコレプシーの発症機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 18K19450
研究機関大阪大学

研究代表者

荒瀬 尚  大阪大学, 微生物病研究所, 教授 (10261900)

研究期間 (年度) 2018-06-29 – 2021-03-31
キーワードHLAクラスⅡ / オレキシン / エクソゾーム
研究実績の概要

ナルコレプシーはオレキシンを産生するニューロンが消失し、オレキシンが枯渇することによって睡眠発作を主体とする神経疾患である。ナルコレプシーの患者のほぼ100%が、ヒトの主要組織適合抗原(MHC)クラスIIのHLA-DQB1*0602(DQ0602)アリルを持っており、オッズ比が320にもなる。関節リウマチ等の自己免疫疾患でもHLAクラスIIが最も関連の高い遺伝子であるが、それでもオッズ比が4程度であることを考えると異常に高い。しかし、なぜナルコレプシーの発症にHLA-DQ0602が必要なのかは依然として不明である。HLA(MHC)は、T細胞にペプチド抗原を提示することで、免疫応答の中心的な役割を担っているが、我々はHLAクラスII分子にはペプチドを提示するだけでなく、細胞内のミスフォールドしたタンパク質を細胞外へ輸送するというシャペロン様の機能を発見した。さらに、HLAクラスII分子によって細胞外へ輸送されたタンパク質は、様々な自己免疫疾患で産生される自己抗体の標的になっていることや、HLAクラスII分子による疾患標的分子の輸送能はHLAクラスIIアリルによる疾患感受性と強い相関が認められることをから、HLAクラスII分子のシャペロン様機能が自己免疫疾患に関与していると考えられる。そこで、ナルコレプシーにおいてもオレキシン・HLAクラスII複合体が疾患発症に関与しているかの解析を目的として研究を実施した。その結果、オレキシンもナルコレプシーに感受性のアリルであるHLA-DQ0602と複合体を形成することが明らかになった。一方、非感受性のアリルでは弱い複合体の形成しか認められなかった。そこで、ナルコレプシーの患者においてはHLA-DQ0602とオレキシン複合体に形成による細胞毒性やオレキシンレセプターとの相互作用がオレキシン産生細胞の生存に関与している可能性が考えられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

我々は、HLAクラスII分子にはペプチドを提示するだけでなく、細胞内のミスフォールドしたタンパク質を細胞外へ輸送するというシャペロン様の機能を明らかにしてきた。さらに、HLAクラスII分子によって細胞外へ輸送されたタンパク質は、様々な自己免疫疾患で産生される自己抗体の標的になっていること、さらに、HLAクラスII分子による疾患標的分子の輸送能はHLAクラスIIアリルによる疾患感受性と強い相関が認められることをから、HLAクラスII分子のシャペロン様機能が自己免疫疾患に関与していると考えられる。そこで、本研究では、ナルコレプシーにおいてもオレキシン・HLAクラスII複合体が疾患発症に関与しているかの解析を目的として研究を実施した結果、オレキシンもナルコレプシーに感受性のアリルであるHLA-DQ0602と複合体を形成することが明らかになった。一方、様々なHLA-DRやHLA-DQアリルを解析することにより、非感受性のアリルでは弱い複合体の形成しか認められなかった。したがって、、オレキシン・HLAクラスII複合体がナルコレプシーの発症に関与している可能性が考えられた。しかし、オレキシン・HLAクラスII複合体がどの様に細胞死を誘導するかについては、in vitroの実験系では明らかにすることができなかったので、さらにオレキシン・HLAクラスII複合体の病原性について、オレキシンレセプターとの相互作用や様々な細胞種を用いて解析を進める必要があると考えられた。

今後の研究の推進方策

本研究によって、ナルコレプシーにおいてもオレキシン・HLAクラスII複合体が疾患発症に関与しているかの解析を目的として研究を実施した結果、オレキシンもナルコレプシーに感受性のアリルであるHLA-DQ0602と複合体を形成することが明らかになった。一方、様々なHLA-DRやHLA-DQアリルを解析することにより、非感受性のアリルでは弱い複合体の形成しか認められなかった。したがって、、オレキシン・HLAクラスII複合体がナルコレプシーの発症に関与している可能性が考えられた。しかし、オレキシン・HLAクラスII複合体がどの様に細胞死を誘導するかについては、in vitroの実験系では明らかにすることができなかったので、さらにオレキシン・HLAクラスII複合体の病原性について解析を進める必要があると考えられた。そこで、様々な細胞株を用いてオレキシン・HLAクラスII複合体の病原性についての解析を進める予定である。また、オレキシン・HLAクラスII複合体をマウスに投与することによっても、オレキシン・HLAクラスII複合体の病原性についての解析を進める予定である。さらに、オレキシン・HLAクラスII複合体が発現している細胞におけるオレキシンレセプターとの相互作用が関与している可能性も考えられるので、今後はオレキシンレセプターとの相互作用も含めて解析を進める。

次年度使用額が生じた理由

最大600文字(1200バイト)、改行は3回まで入力可。ただし、一時保存の際は1200文字(2400バイト)まで入力できます。 (全角文字は2バイト、半角文字は1バイトと換算)

  • 研究成果

    (20件)

すべて 2020 2019 その他

すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 2件、 招待講演 7件) 図書 (1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Antigen-driven selection of antibodies against SSA, SSB and the centromere 'complex', including a novel antigen, MIS12 complex, in human salivary glands.2019

    • 著者名/発表者名
      Takeshita M, Suzuki K, Kaneda Y, Yamane H, Ikeura K, Sato H, Kato S, Tsunoda K, Arase H, Takeuchi T.
    • 雑誌名

      Ann Rheum Dis.

      巻: 79 ページ: 150-158

    • DOI

      10.1136/annrheumdis-2019-215862.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Case of epidermolytic ichthyosis with impairment of pulmonary function and exacerbated skin manifestations in a late middle-aged adult.10.1136/annrheumdis-2019-215862.2019

    • 著者名/発表者名
      Maekawa A, Arase N, Tamai K, Nomura T, Kiyohara E, Wataya-Kaneda M, Arase H, Katayama I, Fujimoto M.
    • 雑誌名

      J Dermatol.

      巻: 46 ページ: e480-e482

    • DOI

      10.1111/1346-8138.15077.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Autoantibodies detected in patients with vitiligo vulgaris but not in those with rhododendrol-induced leukoderma.2019

    • 著者名/発表者名
      Arase N, Tanemura A, Jin H, Nishioka M, Aoyama Y, Oiso N, Matsunaga K, Suzuki T, Nishigori C, Kawamura T, Shimizu T, Ito A, Fukai K, Abe Y, Yang L, Tsuruta D, Takeoka K, Iwatani Y, Hidaka Y, Nishida M, Yamauchi-Takihara K, Arase H, Fujimoto M, Katayama I.
    • 雑誌名

      J Dermatol Sci.

      巻: 95 ページ: 80-83

    • DOI

      10.1016/j.jdermsci.2019.06.009.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Transport of cellular misfolded proteins to the cell surface by HLA-B27 free heavy chain.2019

    • 著者名/発表者名
      Yorifuji H, Arase N, Kohyama M, Hirano T, Suenaga T, Kumanogoh A, Arase H.
    • 雑誌名

      Biochem Biophys Res Commun.

      巻: 511 ページ: 862-868

    • DOI

      10.1016/j.bbrc.2019.02.120.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] FcγRIIIA-mediated activation of NK cells by IgG heavy chain complexed with MHC class II molecules.2019

    • 著者名/発表者名
      Shimizu Y, Kohyama M, Yorifuji H, Jin H, Arase N, Suenaga T, Arase H.
    • 雑誌名

      Int Immunol.

      巻: 31 ページ: 303-314

    • DOI

      10.1093/intimm/dxz010.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 概論ーHLAの新展開2019

    • 著者名/発表者名
      荒瀬 尚
    • 雑誌名

      実験医学

      巻: 37 ページ: 2246-2252

  • [雑誌論文] HLAクラスⅡ分子によるネオ・セルフの生成と自己免疫疾患2019

    • 著者名/発表者名
      末永忠広、荒瀬 尚
    • 雑誌名

      実験医学

      巻: 37 ページ: 2275-2281

  • [学会発表] HLAと疾患2020

    • 著者名/発表者名
      荒瀬 尚
    • 学会等名
      第5回日本骨免疫学会ウインタースクール
    • 招待講演
  • [学会発表] FcγRIIIA-mediated activation of NK cells by IgG heavy chain complexed with MHC class II molecules2019

    • 著者名/発表者名
      Tadahiro Suenaga, Yuta Shimizu, Masako Kohyama, Hideki Yorifuji, Jin Hui, Noriko Arase, Hisashi Arase
    • 学会等名
      第48回日本免疫学会学術集会
  • [学会発表] CD74 isoform p41 regulates soluble MHC class II production2019

    • 著者名/発表者名
      Masako Kohyama, Sumiko Matsuoka, Tatsuya Shishido, Yuta Shimizu, Hisashi Arase
    • 学会等名
      第48回日本免疫学会学術集会
  • [学会発表] ネオセルフによる新たな自己免疫疾患発症機構2019

    • 著者名/発表者名
      荒瀬 尚
    • 学会等名
      2019 Meet The Specialist
    • 招待講演
  • [学会発表] HLAによる新たな自己免疫疾患発症機構2019

    • 著者名/発表者名
      荒瀬 尚
    • 学会等名
      第4回TOHOKU Educational Seminar of Dermatology(TED)
    • 招待講演
  • [学会発表] Chaperon-like function of MHC class II molecules for misfolded proteins: A new mechanism for autoimmune diseases2019

    • 著者名/発表者名
      Hisashi Arase
    • 学会等名
      2019 NIH-Japan-JSPS Symposium
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Regulation of immune response by antigen-induced TCR-like antibodies2019

    • 著者名/発表者名
      Kazuki Kishida, Tadahiro Suenaga, Hisashi Arase
    • 学会等名
      第18回あわじ感染と免疫フォーラム
  • [学会発表] TSHR / MHC class II complexes are involved in the pathogenesis of Graves' disease2019

    • 著者名/発表者名
      Hui Jin, Noriko Arase, Masako Kohyama, Tadahiro Suenaga, Takehiko Sasazuki, Hisashi Arase
    • 学会等名
      第18回あわじ感染と免疫フォーラム
  • [学会発表] ネオセルフによる新たな自己免疫発症機構2019

    • 著者名/発表者名
      荒瀬 尚
    • 学会等名
      阿蘇シンポジウム
    • 招待講演
  • [学会発表] MHC class II-induced misfolded proteins are targets for autoimmune diseases2019

    • 著者名/発表者名
      Hisashi Arase
    • 学会等名
      The 1st UCL-OU Joint Symposium on Immunology
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] MHCクラスⅡ分子によるDNAの提示2019

    • 著者名/発表者名
      辻 英輝、大村 浩一郎、荒瀬 規子、香山 雅子、榊原 修平、菊谷 仁、末永 忠広、三森 経世、荒瀬 尚
    • 学会等名
      第29 回Kyoto T cell Conference
    • 招待講演
  • [図書] 免疫・炎症病態×治療Update2019

    • 著者名/発表者名
      日和 良介、荒瀬 尚
    • 総ページ数
      252()
    • 出版者
      南山堂
    • ISBN
      978-4-525-16781-3
  • [備考] 免疫化学分野ホームページ

    • URL

      http://immchem.biken.osaka-u.ac.jp

URL: 

公開日: 2021-01-27  

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