研究課題/領域番号 |
18K19452
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
一戸 辰夫 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 教授 (80314219)
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研究分担者 |
本庶 仁子 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 講師 (80614106)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | T細胞受容体 / 主要組織適合性抗原複合体 / 交差反応性 / 網羅的免疫シークエンス / 共有クロノタイプ |
研究実績の概要 |
本研究では獲得免疫応答機構の新しい法則性を発見し、各種の免疫異常症に対する理解の深化や、真に有効な細胞免疫療法の開発を実現するために、TCRの網羅的機能解析と人工知能(AI)等を用いたTCR構造の次世代ハイスループット解析技術とを組み合わせて、「個体の主要な免疫応答はMHC交差性TCRによって担われており、それらの多くは異なる個体間においても共有されている(共有TCR)」という仮説の証明に挑戦することを目的としている。2018年度は、同種造血細胞移植後の免疫再構築におけるTCRクロノタイプの網羅的解析を試み、研究への参加に同意が得られた15名の末梢血よりTCRβ鎖クロノタイプ約273万種類を取得し、それらのうち42,436種類(1.5%)は2名以上で共有されていることを確認した。次いで、既知の文献等に基づき共同研究者とVDJクロノタイプの検索データベースを構築するとともに、これらの「共有TCR」のうち、サイトメガロウイルス抗原への特異性を有する76種類の同定に成功した。現在、特に共有頻度の高いHLA-B7拘束性の2種類のCMV特異的クロノタイプが、HLA-B7非保有者の末梢血にも存在していることを確認しており、当該TCRクロノタイプが認識するB7以外のHLA上のエピトープの同定を試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究初年度中に、複数のHLA交差性TCRクロノタイプを同定することに成功したことは予想以上に大きな進捗であった。また、同定されたTCRのHLA-ペプチド複合体結合能を詳細に検討するため、ゲノム編集により作出した内在性TCRを発現しないヒトT細胞株に発現させ、HLA交差性(複数のHLA-ペプチド複合体を認識)を評価するための実験系も既に確立しており、ゼブラフィシュモデルにおける全個体TCRレパトワの解析系も準備がほぼ終了している。
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今後の研究の推進方策 |
単一細胞レベルの免疫シークエンスを用いて、MHC交差性およびMHC拘束性TCRαβクロノタイプの候補を同定可能とする新しいVDJデータベースの開発を推進するとともに、同定されたTCRの構造解析をさらに推進するため、本年度より、海外の生命情報科学研究者を研究協力者に追加する。また、現在、利用可能な3次元構造ホモロジーモデリング等のプログラムではMHC交差性TCRの特徴量を抽出することは困難である可能性があり、それに変わる方法を研究協力者と考案する。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画していた網羅的免疫シーケンスが使用するシークエンサーの検体処理能の影響により、年度内に完了しなかったため、次年度使用額が生じた。今年度は、シークエンスをさらに効率的に行う体制を整備し、年度内の前半に本研究に必要なシークエンスを完了し、2019年度分として請求した助成金を用いて、ヒトおよびゼブラフィッシュの交差性TCRの構造解析を計画通りに完了する予定である。
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