研究課題/領域番号 |
18K19454
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
石野 智子 愛媛大学, プロテオサイエンスセンター, 准教授 (40402680)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | マラリア / 肝細胞 |
研究実績の概要 |
肝細胞に侵入したマラリア原虫は、極めて短期間のうちに数十万倍にも増殖し次の赤血球感染型原虫へと分化する。申請者らが同定した肝臓ステージ特異的マラリア原虫タンパク質Liver stage specific protein 2 (LISP2)が、どのように感染維持に寄与するのか解明することを目的とする。LISP2は宿主細胞へと移行することから、「原虫タンパク質 LISP2 が宿主細胞の遺伝子発現を制御し、感染に至適な環境を構築する」という作業仮説のもと、LISP2 によって発現制御される宿主細胞分子を同定し、その役割を明らかにすることを目的とする。 本年度は、LISP2-KO原虫に強いGFPの蛍光を発する原虫を作出し、その表現型が過去に報告したものと同様に、肝細胞への感染、肝細胞内での発育は正常であるが、in vivoでネズミへの感染効率が1/10程度に減少することを確認した。また、GFPを発現させた原虫のスポロゾイトを、感染蚊の唾液腺から回収し、これを肝由来培養細胞に添加し培養後36時間目の感染肝細胞をソーティングにより分取する系を確立した。 さらに、感染維持機構に必要な宿主細胞分子を絞り込む目的で、マラリア原虫の侵入効率、および発育効率を7種類の培養細胞株で比較した。その結果、細胞侵入効率に比較して、細胞内での原虫発育効率が顕著に低い細胞株を見出した。トランスクリプトームデータを活用することで、原虫発育の支持に関与する宿主側細胞分子の選択に繋げられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
CRISPRによるLISP2発現肝細胞の作成について、実験系に不慣れなためか、想定以上に時間がかかっているため。
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今後の研究の推進方策 |
1)野生型原虫/LISP2欠損原虫を感染させた肝細胞をGFP蛍光を指標に分取し、RNAを抽出、cDNAライブラリーを構築し、RNA seqで発現遺伝子を解析する。 2)非感染肝細胞の発現プロファイルとも比較し、LISP2欠損原虫感染肝細胞に比べて、野生型感染肝細胞で発現が有意に増強される遺伝子を選択する。 3)LISP2を強制発現させた細胞で、2)で選択した分子が発現増強するか解析する。 4)選ばれた分子群を、肝由来培養細胞で発現抑制することで、マラリア原虫の感染に影響が見られるのか解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
分子生物学的実験を主に進めたが、汎用性の高い試薬類が多く、ストックしていたものから使用したため。また、高額な試薬が必要となるCRISPRを用いた遺伝子改変の実験が、条件検討などに時間を要したため、次年度へと計画自体を繰り越したため。 次年度は、上記のCRISPR実験、および、ソーティングによる感染肝細胞の分取、RNA seqを予定している。さらに、LISP2によって発現に影響のある宿主分子が見いだされれば、その分子を発現抑制した肝細胞に対するスポロゾイトの感染性を解析する。
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