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2018 年度 実施状況報告書

ASKファミリーによるがん転移制御機構の解明と阻害剤探索

研究課題

研究課題/領域番号 18K19469
研究機関東京大学

研究代表者

一條 秀憲  東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 教授 (00242206)

研究期間 (年度) 2018-06-29 – 2020-03-31
キーワードASKファミリー / がん転移 / 阻害剤スクリーニング
研究実績の概要

本研究ではストレス応答性シグナル経路を構成するASKファミリーを標的としたがん転移阻害剤開発基盤の構築を目標とし、(A) 高感度微小転移検出系を用いたASKファミリー分子の欠損マウスの複合的な解析、(B) 血管内皮細胞 (EC) 特異的なsiRNA輸送体を用いた、がん転移に対するASKファミリー阻害効果の検証、(C) ASKファミリーを標的としたがん転移阻害剤のin vitro, in vivoスクリーニング、の3つの研究目的を2年間で遂行するよう設定していた。1年目の本年度は主に(A)と(B)に関して解析を進めてきた。
(A)に関しては単独遺伝子欠損 (KO)マウスの実験的肺転移モデルにおける表現型を解析し、がん転移の減弱はASK1欠損マウス特異的に観察されることを明らかにした。(B)に関してはECでASKファミリーを阻害することによる弊害を予め検証すべきだと判断し、(A)の結果も踏まえ、ASK1をECでノックダウンした際のin vitroの表現型解析を解析した。するとin vivoの表現型と相反する結果が得られ、ECでASK1を阻害する際には慎重な判断を要すると結論づけた。(C)については実績は未だ得られていないものの、in vitroでのASK阻害剤スクリーニング構築に向けて条件検討を進めている。またin vivoスクリーニングについては、マウスの手配を進めている段階にある。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

概要で述べた3つの研究目的別の進捗状況に関して、まず(A)についてはASKファミリー各分子の単独KOマウスの解析を進め、マウスの尾静脈からがん細胞を移入して肺へと転移させる実験的肺転移モデルにおいて、ASK2欠損マウスやASK3欠損マウスでは肺転移の減弱が見られないことを明らかにした。一方既に報告した通り (Kamiyama et al., Cell Death Differ. 2017)、ASK1欠損マウスでは劇的な肺転移減弱が観察されるため、少なくとも実験的肺転移モデルにおいてはASKファミリーの中でもASK1が主にがん転移を制御すると考えられる。よって本研究の研究目的に照らし合わせ、がん転移阻害剤の標的をASK1に絞ることとした。
(B)についてはECでASK1をin vitroでノックダウンして見られる表現型の解析を進め、通常の生理応答でECが果たす役割のうち一部に欠陥が生じることを明らかにした。しかしEC特異的なASK1欠損マウスでは、上記と同等のin vivoでの生理応答時の表現型は正常であったことから、ECの生理応答に与えるASK1の影響を慎重に判断する必要があると言える。EC特異的なsiRNA輸送体の手配については現在進行中である。
(C)についてはスクリーニングの条件検討及びマウスの手配を進めており、次年度でのスクリーニング遂行に向けての準備段階にある。

今後の研究の推進方策

(A)についてはほぼ解析を終了しており、今後は(C)でのASK1特異的な阻害剤探索を遂行したい。但し、ASK2欠損マウスやASK3欠損マウスではがん転移の亢進も観察されないため、阻害することによる弊害は大きくないと考えられる。よって阻害剤のASK1特異性は、可能な限り考慮する程度に留めたい。しかし一方でASKファミリー分子を複数阻害することによる弊害は検証できていないため、多重KOマウスのがん転移における表現型解析は当初の計画通り遂行予定である。
(B)についてはEC特異的なsiRNA輸送体のin vitro及びin vivoでのASK1のノックダウン効率の検証を進めるが、輸送体処置時に何らか生理応答に異常が現れないかを慎重に見極めたい。問題がないようであればがん転移の表現型に与える影響を検証する予定である。
(C)については、スクリーニングの条件検討が終了し次第、in vitroのスクリーニングを遂行する。またin vivoスクリーニングで使用予定のマウスを用意するにあたり、必要な3系統のマウスのうち2系統の入手が完了していないため、到着し次第掛け合わせを開始したい。その後作出したマウスを実験的肺転移モデルに供し、PETやin vivo bioluminescence imagingでのシグナルが検出できるかを確認することで、in vivoスクリーニングの基盤を整えたい。

次年度使用額が生じた理由

(C)のin vivoでのASK阻害剤スクリーニングで使用予定のマウスの作出にあたり、必要な3系統のマウスのうち2系統の手配が申請時の計画よりも遅れており、マウスの飼育・維持費が想定よりも低く抑えられたことが主な理由である。また次年度使用額に関しても、(A)の結果を受け、ASK2やASK3を欠損したマウスの解析は多重KOマウスの解析のみに留める予定である。よって計画に含まれていた、組織特異的なKOマウスの作出は本研究費の範囲内では行わないため、次年度使用予定額から差し引くこととする。しかし一方で、in vitroでのスクリーニングの条件検討が長引いていることに伴って、スクリーニング遂行に必要な試薬購入は次年度に繰り越しているため、本年度と次年度予定の変更で生じた差額をもって補填する予定である。

  • 研究成果

    (16件)

すべて 2018

すべて 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 1件、 査読あり 9件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (7件)

  • [雑誌論文] β-TrCP-dependent degradation of ASK1 suppresses the induction of the apoptotic response by oxidative stress2018

    • 著者名/発表者名
      Cheng Ran、Takeda Kohsuke、Naguro Isao、Hatta Tomohisa、Iemura Shun-ichiro、Natsume Tohru、Ichijo Hidenori、Hattori Kazuki
    • 雑誌名

      Biochimica et Biophysica Acta (BBA) - General Subjects

      巻: 1862 ページ: 2271~2280

    • DOI

      10.1016/j.bbagen.2018.07.015

    • 査読あり
  • [雑誌論文] A small-molecule inhibitor of SOD1-Derlin-1 interaction ameliorates pathology in an ALS mouse model2018

    • 著者名/発表者名
      Tsuburaya, N., Homma, K., Higuchi, T., Balia, A., Yamakoshi, H., Shibata, N., Nakamura, S., Nakagawa, H., Ikeda, S., Umezawa, N., Kato, N., Yokoshima, S., Shibuya, M., Shimonishi, M., Kojima, H., Okabe, T., Nagano, T., Naguro, I., Imamura, K., Inoue, H., Fujisawa, T., and Ichijo, H.
    • 雑誌名

      Nature Communications

      巻: 9 ページ: 2668

    • DOI

      10.1038/s41467-018-05127-2

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Cryo-EM structure of the volume-regulated anion channel LRRC82018

    • 著者名/発表者名
      Kasuya Go、Nakane Takanori、Yokoyama Takeshi、Jia Yanyan、Inoue Masato、Watanabe Kengo、Nakamura Ryoki、Nishizawa Tomohiro、Kusakizako Tsukasa、Tsutsumi Akihisa、Yanagisawa Haruaki、Dohmae Naoshi、Hattori Motoyuki、Ichijo Hidenori、Yan Zhiqiang、Kikkawa Masahide、Shirouzu Mikako、Ishitani Ryuichiro、Nureki Osamu
    • 雑誌名

      Nat. Struct. Mol. Biol.

      巻: 25 ページ: 797-804

    • DOI

      https://doi.org/10.1101/331207

    • 査読あり
  • [雑誌論文] ASK family kinases mediate cellular stress and redox signaling to circadian clock2018

    • 著者名/発表者名
      Imamura Kiyomichi、Yoshitane Hikari、Hattori Kazuki、Yamaguchi Mitsuo、Yoshida Kento、Okubo Takenori、Naguro Isao、Ichijo Hidenori、Fukada Yoshitaka
    • 雑誌名

      Proceedings of the National Academy of Sciences

      巻: 115 ページ: 3646~3651

    • DOI

      10.1073/pnas.1719298115

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] A PP6-ASK3 Module Coordinates the Bidirectional Cell Volume Regulation under Osmotic Stress2018

    • 著者名/発表者名
      Watanabe Kengo、Umeda Tsuyoshi、Niwa Kuniyoshi、Naguro Isao、Ichijo Hidenori
    • 雑誌名

      Cell Reports

      巻: 22 ページ: 2809~2817

    • DOI

      10.1016/j.celrep.2018.02.045

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Molecular mechanisms of cell death: recommendations of the Nomenclature Committee on Cell Death 20182018

    • 著者名/発表者名
      Galluzzi Lorenzo, et al.
    • 雑誌名

      Cell Death & Differentiation

      巻: 25 ページ: 486~541

    • DOI

      10.1038/s41418-017-0012-4

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Role of ASK1/p38 Cascade in a Mouse Model of Alzheimer’s Disease and Brain Aging2018

    • 著者名/発表者名
      Hasegawa Yu、Toyama Kensuke、Uekawa Ken、Ichijo Hidenori、Kim-Mitsuyama Shokei
    • 雑誌名

      Journal of Alzheimer's Disease

      巻: 61 ページ: 259~263

    • DOI

      doi: 10.3233/JAD-170645

    • 査読あり
  • [雑誌論文] mASKing cancer cells in a tumor microenvironment2018

    • 著者名/発表者名
      Kamiyama Miki、Naguro, Isao、Ichijo Hidenori
    • 雑誌名

      Cell Cycle

      巻: 17 ページ: 139~140

    • DOI

      10.1080/15384101.2017.1407402

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Apoptosis signal-regulating kinase 1 in regulated necrosis2018

    • 著者名/発表者名
      Hattori Kazuki、Ichijo Hidenori
    • 雑誌名

      Cell Cycle

      巻: 17 ページ: 5~6

    • DOI

      10.1080/15384101.2017.1397330

    • 査読あり
  • [学会発表] 血小板におけるASK1がADP受容体P2Y12のリン酸化を介して肺へのがん転移を制御する2018

    • 著者名/発表者名
      神山美樹, 大亀美桜, 名黒功, 一條秀憲
    • 学会等名
      第22回日本がん分子標的治療学会学術集会
  • [学会発表] 血管内皮細胞におけるASK1が肺へのがん転移を制御する2018

    • 著者名/発表者名
      古川夏輝, 神山美樹, 名黒功, 一條秀憲
    • 学会等名
      第22回日本がん分子標的治療学会学術集会
  • [学会発表] 抗腫瘍性免疫におけるASK1の機能解析,2018

    • 著者名/発表者名
      藤本磨琴, 神山美樹, 名黒功, 一條秀憲,
    • 学会等名
      第22回日本がん分子標的治療学会学術集会
  • [学会発表] Functional analysis of ASK family in hemostasis and tumor metastasis2018

    • 著者名/発表者名
      Kamiyama, M., Naguro, I., Ichijo, H.
    • 学会等名
      第40回日本血栓止血学会学術集会
  • [学会発表] マウスを用いたがん転移におけるASKファミリーの機能解析2018

    • 著者名/発表者名
      神山美樹
    • 学会等名
      第27回日本がん転移学会学術集会
  • [学会発表] 血管内皮細胞におけるASK1が肺へのがん転移を制御する2018

    • 著者名/発表者名
      古川夏輝, 神山美樹, 名黒功, 一條秀憲
    • 学会等名
      第91回日本生化学会大会
  • [学会発表] 抗腫瘍性免疫におけるASK1の機能解析2018

    • 著者名/発表者名
      藤本磨琴, 神山美樹, 名黒功, 一條秀憲
    • 学会等名
      第91回日本生化学会大会

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公開日: 2019-12-27  

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