研究課題/領域番号 |
18K19471
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
関 元昭 東京大学, 先端科学技術研究センター, 特任助教 (70714278)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | DNAバーコード |
研究実績の概要 |
不均質な細胞集団の形質を高解像度に観察するには、個々の細胞を識別するためにタグ付けし、それぞれの細胞のシングルセル遺伝子発現情報とタグ情報を紐付けて解析する必要があり、H31年度においては、一細胞遺伝子発現解析と細胞系譜の再構成を同時に行う技術を開発課題として取り組んだ。 既存のDNAバーコードはランダムなDNA配列がホストゲノムに挿入されることでタグ付けを行うが、この情報はRNAへと転写されないため、遺伝子発現解析ではバーコード配列を捕捉できない。そこでレンチウイルスベクターのマーカー遺伝子の3’UTRへ、50塩基長のDNAバーコード配列をクローニングした。このプラスミドを混合プールのまま高複雑度のレンチウイルス粒子へとパッケージングし、このレンチウイルスライブラリーを細胞へ感染させることで、細胞集団はそれぞれ任意の異なるDNAバーコードを獲得した。DNAバーコードを導入した細胞では、マーカー遺伝子とその下流に配置したDNAバーコード配列が連結して転写されるため、感染細胞を選択薬剤を含む培地中で培養し、その後細胞を溶解して全RNAを抽出した。オリゴdTプライマーを用いて逆転写した。マーカー遺伝子の3'端に設計したプライマーを用いてDNAバーコード配列を増幅し、超並列シークエンサーによって配列を取得した。本解析によって、細胞へ導入したDNAバーコードの種類が薬剤選択後も十分に保証されていることを示した。 また、高複雑度のDNAバーコードを用いた大規模な感染実験においては、高タイターのレンチウイルスを高効率に産生する必要がある。そこで、パッケージングに使用する細胞、試薬、プラスミドについて条件検討を行い、高効率の実験条件を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
転写型DNAバーコードを搭載したプラスミドを構築し、実際に逆転写から超並列シークエンサーによって配列取得に成功した。細胞へ導入したDNAバーコードの種類が薬剤選択後も十分に保証されていることを示した。
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今後の研究の推進方策 |
転写型DNAバーコードを大腸癌オルガノイドに適用し、成長したオルガノイドの一細胞トランスクリプトーム解析とそれぞれの細胞が保持するDNAバーコード情報を紐付けて解析する。Lgr5やKRT20などの幹細胞マーカー、分化細胞マーカーを指標にサブポピュレーションごとの特徴遺伝子群を抽出し、細胞集団のヒエラルキーを明らかにする。
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