研究課題/領域番号 |
18K19473
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
三木 義男 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 教授 (10281594)
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研究分担者 |
砂田 成章 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教 (70807677)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | ミトコンドリア / マイトファジー / BRCA1/2 / Mfn |
研究実績の概要 |
本研究では、細胞のミトコンドリア制御機能、特にミトコンドリア損傷時における選択的オートファジーであるマイトファジーの変調が乳がんを発症させるという乳腺発がんの新規分子機構の解明を目指す。遺伝性乳がん原因遺伝子産物BRCA1、BRCA2を含む分子群が、マイトファジー経路で機能することが新しく報告された。そこで、本研究では、BRCA2とミトコンドリア制御に関わる重要な分子との相互作用を探索し、ミトコンドリア融合に関わる因子Mfnと相互作用することを見出した。BRCA1・2 の強制発現系を用い細胞質を分画、BRCA1・2 の免疫沈降物を質量分析法で解析し相互作用分子を探り、ミトコンドリア外膜に存在するMfnとBRCA2との相互作用を確認した。Mfnは分裂と融合を繰り返すミトコンドリアダイナミクスにおいて融合を主導し、また、ミトコンドリア損傷時にマイトファジーの実行のため、ユビキチンリガーゼParkinにより自身がユビキチン化されオートファゴソーム膜を誘導するマーカーとしても機能する。そこで、さらにこれらの知見を基軸に、BRCA2のミトコンドリア制御機構における役割を解明し、得られた情報を基に、BRCA2遺伝子の乳がん誘発変異の導入がこの経路に影響しミトコンドリア機能を変調させる可能性を考え、これを示すため、まず、GFP(緑)とRFP(赤)でミトコンドリアを標識し、ミトコンドリアの細胞内における融合(黄色に変化)を観察・解析する系の構築を完了した。この系を用いて BRCA2の過剰発現及び発現抑制が融合機能に与える影響を解析し、平常時、細胞内ミトコンドリアの分裂・融合バランスをBRCA2とMfnが協同で融合傾向に制御して細胞活動の安定化に機能していることを検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画は、次の二つの仮説を証明することが、中心となる。 仮説1:平常時、細胞内ミトコンドリアの分裂・融合バランスをBRCAとMfnが協同で融合傾向に制御して細胞活動の安定化に機能している。 仮説2:ミトコンドリアの分裂・融合は、各々に関わる GTPase のバランスで調節されている。ミトコンドリアの高度損傷時、融合促進 GTPase(Mfn, MARF)をBRCAが抑制することで、損傷ミトコンドリアと正常体の融合を阻止し、損傷ミトコンドリアのオートファゴソーム膜による取込みを促進している。 前半の計画予定である仮設1を示すデータはほぼ得られているので、おおむね順調にすすんでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
計画通り、仮説2について、データを得るために、BRCA2の発現及び発現抑制によりマイトファジーに及ぼす影響を、マイトファジー観察に適した発光型 Parkin 過剰発現の系を用いて検証する。ミトコンドリアがマイトファジーで分解される際に、損傷ミトコンドリアを取り込んで形成されたオートファゴソームがリソソームと融合して小胞内が中性から酸性に変化するが、この変化を励起波長の違いによりモニタリングするアッセイ系を用いて測定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
仮説1を検証するために、GFP(緑)とRFP(赤)でミトコンドリアを標識し、ミトコンドリアの細胞内における融合(黄色に変化)を観察・解析する系を構築し、さらに高精度の改良を行ったため、この系のランニングコストが、計画より安価となり、所要額と実支出額に差が出た。これを、仮説2を証明するため、ミトコンドリアがマイトファジーで分解される際に、損傷ミトコンドリアを取り込んで形成されたオートファゴソームがリソソームと融合して小胞内が中性から酸性に変化するが、この変化を励起波長の違いによりモニタリングするアッセイ系の構築に用いる。
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