研究課題
がんに特異的なCAR-T細胞やT細胞抗原リセプター(TCR)遺伝子導入T細胞(ヒトの系、MAGE-A4特異的CAR-T細胞、MAGE-A4エピトープ/HLA-A24特異的TCR-T細胞;マウスの系CEA特異的CAR-T細胞)の培養上清から、限外濾過法とイオン交換法でエクソソームを調製し、それを特異的な皮下移植腫瘍(ヒトの系、MAGE-A4陽性NW-MEL-38+間葉系幹細胞(MSC)のヌードマウス皮下移植腫瘍;マウスの系、CEA陽性MC32aのB6マウス皮下移植腫瘍)の腫瘍内に投与した。その結果、コントロールとして行った非特異的腫瘍への投与での腫瘍増殖抑制効果はほとんど観察されないものの、特異的腫瘍への投与では腫瘍増殖が顕著に抑制された。また、特異性の違うCAR-T細胞エクソソーム投与では、ヒトとマウスの系で弱い腫瘍増殖抑制が観察された。マウスの系について、非特異的腫瘍の切片を免疫染色すると、がん関連線維芽細胞(CAF)や間葉系幹細胞(MSC)で構成される間葉系がん間質領域は無くなるものの、間葉系細胞マーカー陽性の進行性のがん細胞が残るのに対し、特異的腫瘍では、CAFやMSC領域の消失とともに、進行性のがん細胞も消失していた。マウスの系において、CEA特異的CAR-T細胞エクソソームを特異的(MC32a)及び非特異的(MC38)腫瘍内に投与し、3日後にがん特異的または非特異的CTLを静脈内投与すると、エクソソーム無処理群では、わずかな移入細胞の腫瘍内浸潤と弱い腫瘍増殖抑制が観察されるのに対して、非特異的なエクソソーム処理群では、CTLの腫瘍がん領域への強い浸潤が観察され、特異的エクソソーム投与群では、さらに強いCTLのがんがん領域への浸潤が観察された。このように、CTLエクソソームは移入した腫瘍特異的CTLの腫瘍内がん領域浸潤に重要な役割を果たしている。
2: おおむね順調に進展している
CAR-T細胞エクソソームまたはTCR-T細胞エクソソーム単独での実験は当初の予定通り完了したが、特異的CTLを用いた移入実験では、1種類の系が終了しているが、さらに違う腫瘍系での実験が残されているため。
CAR-T細胞エクソソームの腫瘍内投与後のCTL移入による腫瘍増殖抑制効果をB16メラノーマの系で行う。CTL移入の実験では、コントロールを含めたそれぞれの腫瘍のmRNAの網羅的解析を行い、がん間質の消失とCTL浸潤を及ぼす分子を予測し、そのノックダウンまたは後退処理による変化を観察する。
所属する研究室の他の研究開発事業で多忙を極め、本研究において、網羅的解析、抗体、siRNAなど高額な費用を必要とする研究を達成できない事態となり、次年度はこれらの研究のために使用する。
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Journal of Clinical Investigation
巻: 129 ページ: 1278-1294
10.1172/JCI97642