研究課題
レトロウイルス感染によりMAGE-A4またはCEA特異的CAR-T細胞を作製し、MAGE-A4やCEA CARの発現が、CD4+T細胞及びCD8+T細胞の50%以上で観られるT細胞を用い実験を行った。作製したMAGE-A4およびCEA特異的CAR-T細胞をエフェクター細胞とし、MAGE-A4またはCEA陽性がん細胞とがん関連線維芽細胞(CAF)や間葉系幹細胞(MSC)との単独または混合細胞を標的細胞として、トランスウェルを用いた非接触系培養もしくはCAR-T細胞培養上清から超遠心法で分取した細胞外小胞(EV)の添加による傷害性を中心とした標的細胞変化を検討した。その結果、MAGE-A4およびCEA特異的CAR-T細胞は、非接触系培養や調製したEVの添加により、3日後には単独で培養したCAFやMSCに活性化Caspase-3が観察されアポトーシス関連の形態的な変化が観察されるが、MAGE-A4またはCEA陰性がん細胞とそのCAFまたはMSCとの混合細胞に対しては、なんの細胞死も起こらず、CAFやMSCもアポトーシスのサインを示さなかった。MAGE-A4およびCEA陽性がん細胞には、非接触系培養でもEV添加でもがん細胞傷害が観察された。また、EV放出阻害剤であるGW4869処理したCAR-T細胞では、特異的ながん細胞傷害は起こらなかった。興味深いことに、MAGE-A4およびCEA陽性がん細胞とそのCAFまたはMSCとの混合細胞に対しては、非接触系培養でもEV添加でもがん細胞死とともに、CAFやMSCのアポトーシス傷害も起こり、混合細胞全てが消失することもわかった。以上のように、CAR-T細胞EVは、CARに特異的ながん細胞を傷害すると共に、CAFやMSCなどの間質細胞をも傷害するデュアル機能を持つことが明らかとなった。
すべて 2020
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Biomedicines
巻: 8 ページ: 1278-1294
10.3390/biomedicines8090293