前年度に作製したヒト、マウス両方のインテグリンαvβ6に結合する7つの抗体を元にCAR T細胞を作製した。そのいずれも、in vitroにおいてはインテグリンαvβ6を発現するがん細胞との共培養によりサイトカインを分泌し、また、がん細胞を強く傷害した。さらに、それらのCART細胞は、in vivoにおいてマウス正常組織を傷害しなかった。しかしながら、有意な抗腫瘍効果を示すものも得られなかった。これらの結果からインテグリンαvβ6のような正常組織にも発現している蛋白質を標的としてCAR T細胞を作製しても必ずしも正常組織を傷害しないことは明らかである一方で、抗腫瘍効果をもつものも得られていなかった。我々はこの結果から考えて、臨床応用可能なCAR T細胞を開発するためには、やはり、特に標的蛋白質を絞らないで地道にがん特異性の高い抗体/抗原を探索するしかないと思い直し、様々ながんに対するモノクローナル抗体ライブラリーの作製とその中からのがん特異的抗体の単離を進めており、良いものが取れれば、それに焦点を当てて、次のステップへと進むことにして、研究を先へ進めている。本研究で対象とした乳がんのみならず、肺がん、脳腫瘍においても同様の試みを行い、多数のモノクローナル抗体をすでに作製した。
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