研究課題/領域番号 |
18K19478
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
北尾 洋之 九州大学, 薬学研究院, 教授 (30368617)
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研究分担者 |
飯森 真人 九州大学, 薬学研究院, 准教授 (20546460)
沖 英次 九州大学, 大学病院, 講師 (70380392)
佐伯 浩司 群馬大学, 大学院医学系研究科, 教授 (80325448)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | DNA複製ストレス / RNA転写複合体 / 抗がん剤 / ゲノム不安定性 |
研究実績の概要 |
「がんの特性」を生み出すための性質として「ゲノム不安定性」があり、様々ながんにおける共通の性質として認識されている。多くのがんにおいて、DNA複製ストレスが染色体レベルでのゲノム不安定性を引き起こす要因とされている。DNA複製ストレスとは、DNA損傷やdNTP枯渇など、不完全な環境で正常なDNA複製進行が妨げられる状況を指す。近年、DNA複製進行を妨げる外的な要因がない場合でも、自然発生する因子が引き金となり、DNA複製ストレスが発生していることが知られるようになり、その要因の1つとして、RNA転写中間体(RNA-DNAハイブリッド構造)とDNA複製との衝突が提唱されている。今年度は、FancD2との核内での近接が示唆されているRNAポリメラーゼIIによる転写がFTDによるFancD2活性化に寄与しているか否かについて検証を行った。転写活性を阻害する薬剤のうち、DRBとFlavopiridol添加によりFTD曝露によって誘導されるFancD2活性化が抑制された。また、FTD曝露により発生する複製ストレスに起因して、S期完了後も核内にRPA32フォーカスとして可視化できる1本鎖DNAが形成されることを見出した。さらに、このRPA32フォーカス(1本鎖DNA)にはFancD2も共局在しており、FancD2の発現抑制により、RPA32フォーカスの輝度が強まることを見出した。FancD2は特に複製ステレス誘導時に形成されるRNA転写中間体の解消に関与することが報告されている。我々の実験結果は、FTDによって誘導される複製ストレスに伴ってRNA転写中間体が発生していること、さらにFancD2がその解消に寄与しており、DNA損傷の重篤化を抑制している可能性を示唆する結果と考えられる。
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